年齢を重ねるごとに感じる衰えのなかでも、認知機能の低下によって自分が自分でなくなっていくことに漠然とした恐ろしさを感じる人も多いのではないでしょうか。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、認知症の6割以上を占めるアルツハイマー病に関する最新の研究を紹介。腸内細菌叢の構成とアルツハイマー病の関連性が確かめられ、認知機能が正常なうちに、今よりも簡単で安価にリスクを診断できる可能性があると期待を示しています。
腸内細菌叢がアルツハイマー病の指標となるかもしれない
腸内の細菌がどのような分布を示しているかによって、そこで産生されている物質が異なり、それが脳に影響を与えるのではないか?という指摘があります。逆に、脳の状態が腸内の細菌分布(腸内細菌叢 ちょうないさいきんそう)に影響を与えるのではないかという議論もあります。
今回は、腸内細菌叢の構成を調べることによって、まだ症状の出現していない初期の段階でアルツハイマー病の指標が得られるのではないか、という内容の研究をご紹介します。
● Gut microbiome composition may be an indicator of preclinical Alzheimer’s disease(腸内細菌叢の構成が症状のないアルツハイマー病の指標になるかもしれない)
認知能力が正常の164人が研究の対象となり、このうち49人については他の生物学的な指標でアルツハイマー病の兆候が確かめられていました。
検便により腸内細菌叢の構成を調べたところ、次のような内容が示されました。
- 他の生物学的な指標でアルツハイマー病が確認されている場合とそうでない場合では、腸内細菌叢の構成が異なっている。
- 腸内細菌叢の変化は、アルツハイマー病の原因物質とされるβ-アミロイドやタウ蛋白の蓄積と関連していました。
要約:『アルツハイマー病の症状が現れない初期段階において、腸内細菌叢の構成が変化している可能性がある』
脊髄液や血液検査よりも、簡便でコストのかからない方法でアルツハイマー病初期のスクリーニングができる可能性を感じました。
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