若年失業率20%超。溢れる中国経済の“減速報道”の中でも「特に重い課題」

 

加えて若年層の失業問題。なかでも大学卒業者の就職が困難である現状は、習政権には悩ましい問題だ。2023年の中国の大学卒業生は約1158万人。昨年に続いて再び1000万人を突破し、北京にとって大きな政治圧力となっている。大卒者を作りすぎた反面、大卒に見合う仕事を十分に提供できなくなったアンバランスが失業率が高まっている主な原因だ。

高学歴化の現状は、「北京市の大学・大学院卒業生28万5000人のうち、修士・博士課程の大学院卒業生数が初めて学部の卒業生数を超える」(人民網日本語版 3月31日)という異常なものだ。しかし、学ぶことで一発逆転を狙う農村の学生のエネルギーが高学歴化を支えてきたことを考えれば、「過剰」になったからと単純に減らせばよいという発想にはつながりにくいのも当然だ。

習政権はここ数年、大卒と専門学校卒との間に待遇や賃金の差をつけることを禁ずる法律を制定し、中小企業との待遇の格差を是正する政策も打ち出してきた。学生を中小企業に誘導する措置も講じてきたが、効果的な対策になったとはいえない。こうした問題を数えてゆくと中国経済にうっすらと雲がかかる印象を抱かされる。

だが、問題があるからといって中国の世界における位置づけが大きく変わるのかといえば、決してそんなこともない。人口減少や米中対立が懸念されるなかでも、むしろ中国経済への期待値は今後も一定のペースで上がり続けると考えられているのだ。

理由はいくつかあるが、なかでも重要なのは中国自身が危機感を持ち長期的な目標を確実にこなしながら変化を続けていることだ。例えば、先に不振と書いた貿易についても全体が伸び悩むなか、「新・三種の神器」(電気自動車、リチウム電池、太陽電池)については強さを見せつけているのだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年7月2日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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