日本のプロ野球で最も有名な「呪い」があるのをご存知ですか? この呪いについて、阪神ファンの方なら誰もが知っているのかもしれませんね。今回、メルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ』では、時代小説の名手として知られる作家の早見さんが、 阪神タイガースにかけられた「カーネル・サンダースの呪い」と、その主役であるカーネル・サンダースの人生について紹介しています。
カーネル・サンダースの呪い
投打二刀流に亘る大谷翔平選手の活躍が報道されていますね。アメリカでは球聖と称されるベーブ・ルースと比較されています。
ベーブ・ルースには数多の逸話があります。「バンビーノの呪い」もその一つです。バンビーノとはベーブ・ルースの愛称、呪いをかけられたのはボストン・レッドソックスでした。ルースは1918年にレッドソックスからニューヨーク・ヤンキースにトレードに出され、それまでは投打二刀流であったのが打者に専念、ホームランを量産し野球に革命をもたらしました。
対してレッドソックスは1918年を最後に2004年までワールドシリーズで優勝できませんでした。優勝から遠ざかっていた間、野球ファンの間でルースをトレードに出した報いを受け、レッドソックスには、「バンビーノの呪い」がかけられたと面白がられたのでした。
日本のプロ野球にも呪いがあります。「カーネル・サンダースの呪い」です。1985年、阪神タイガースが21年ぶりに優勝した際、歓喜した阪神ファンは大阪の道頓堀川にダイブ、勢い余ってケンタッキーフライドチキンの店先に飾られたカーネル・サンダースの人形を道頓堀川に投げ捨ててしまいました。
当時の道頓堀川は汚染が激しくヘドロが堆積しており、サンダースの人形は行方不明、サンダースに呪われ阪神は優勝から遠ざかった、何とも大阪らしいジョークです。
また、それくらいサンダースは日本人にも親しみを抱かせるキャラクターだったのです。白髪に白い髭、黒縁の眼鏡、上下白のスーツ、好々爺然としたおじさんは見知らぬケンタッキーという土地にも親近感を抱かせてくれたのでした。
大変に親しみやすいキャラクターですが、サンダースの生涯は決して平坦ではありません。転職、倒産、離婚、人生の辛酸を舐め、挫折どころか死を選んでも無理からぬ体験が目白押しです。