米中対立で中国が戦略転換。見せつける「無視できない現実」とは

 

1983年、エコノミストのセオドア・レビットがハーバード・ビジネス・レビュー誌で「グローバル化」という表現を使用して以降、世界は急速につながり、貿易額も飛躍的に伸びた。そして中国がWTOに加盟し、その流れが加速されると同時に中国が世界のサプライチェーンのなかで果たす役割は飛躍的に拡大した。

市場原理と需給によって生まれた中国依存と複雑に入り組んだ相互依存関係のなかにあって、アメリカが中国の半導体産業だけにダメージを与えようとしても難しい。唯一、それを可能にするとすれば中国が本気で報復しないことだ。そのためには中国が報復を決意するギリギリまで攻撃しながら、一方では懐柔を試みる「調整」が必要だった。

この視点で見たとき米中の首脳会談や高官の訪中によって米中関係を安定させようとする行為は、中国に反撃カードを切らせないための懐柔策でしかない。実際、中国は会談で何を約束しても、それが実行されないことにヤキモキし「言動不一致」とアメリカを批判し続けた。

その意味で中国は「言葉でなく行動」でアメリカの意図を見極めようとし、訪問は歓迎しつつも、きっちりと報復の準備を整え始めたということだ。

さて、こうした事情を踏まえてケリー訪中を少し考えてみたいのだが、ケリーは気候変動問題担当の大統領特使である。米中対立が話題になるとメディアは必ず両国が協力できる分野として「気候変動問題」を取り上げる。これは一つには地球規模の問題だからという意味もあるが、一方では技術があるとされる。

気象の問題を俎上にのせれば、広大な国土と気象条件を備えた中国が蓄積できるデータは膨大で貴重だ。さらに経済力を背景に中国が世界各地で調査を行い積み上げてきたデータは有益で、正確な分析を試みようとすれば中国の協力は不可欠なのだ。

さらに航空宇宙分野での中国の存在感は圧倒的だ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年7月16日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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