日本で衛星通信サービス「Starlink」を法人や自治体向けに展開するKDDIが、7月初旬から海上サービスを開始。開通セレモニーでは、光ケーブルよりもロスが少ないという衛星間通信の高品質などが説明されたようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、飛行機向けなど、「Starlink」の今後の展開を解説。Starlinkの「認定再販事業者」になっているソフトバンク、自社グループで衛星ビジネスを進めようとしているNTTも含め、今後の衛星ブロードバンドビジネスの行方に注目しています。
Starlinkが「衛星間通信」で沖縄をエリア化──飛行機向けサービスも2023年中に開始
KDDIは7月18日、衛星ブロードバンド「Starlink」の海上向けサービス開通セレモニーを開催した。そのなかで、エリアを拡大する仕組みとして「衛星間通信」をKDDIとスペースXとの共同検証結果、実現したという。
衛星間通信では光ケーブルよりもロスがなく、従来の静止衛星に比べても大幅に遅延時間が短く、au通信網品質基準もクリアするほどの高品質だという。
衛星間通信が実現したことで、Starlinkの衛星同士でのメッシュネットワークを構築することが可能となり、2023年7月からは沖縄エリアでのサービスが提供できるようになったとのことだ。
Starlinkは仕組みとして、地上局が近くになければ通信がつながりにくくなる。しかし、沖縄のように地上局から離れていても、衛星間通信により、衛星同士が通信を行い、遠く離れた地上局につなげることができるというわけだ。
Starlinkでは「Starlink Aviation」という飛行機向けのサービスを2023年中にスタートさせるとしている。地上局が近くになくてもサービス提供できるということは、飛行機が太平洋上を飛んでいても、Starlinkの衛星間通信により、日本やアメリカにある地上局までつなぎ、インターネットが使えるということになるのかも知れない。
ちなみにKDDIでは、Starlinkをバックホール回線とした基地局の5G対応も発表している。当然のことながら、通信速度が4Gと比べて高速化されるというわけではないが、5Gのエリア拡大や5G SAなどを見据えた取り組みになるという。
気になるのが、先日、ソフトバンクも法人向けStarlinkの提供を発表したという点だ。今回のセレモニーでもそのあたりを意識していたようで、他社に先駆けてStarlinkを導入してきたスピード感、さらに「技術に裏打ちされたStarlinkのトップランナー」というフレーズを強調していた。
KDDIは「国内初の認定Starlinkインテグレーター」に対して、ソフトバンクは「認定再販事業者」という位置づけだ。KDDIとしては、Starlinkを他のKDDIが提供するサービスと組み合わせて提案できるのが「インテグレーター」だとしているようだが、ソフトバンクも高精度測位サービスや映像・音声通話サービスとの組み合わせを訴求している。
Starlinkを商材として、KDDIとソフトバンクが売り込み合戦をしていくとみられるが、一方で、自社グループで衛星ビジネスを手がけようとするNTTグループは、置いてきぼりを食らうことになるのか。NTTとスカパーJSATによる合弁会社「Space Compass」の動向が気になるところだ。
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