相談件数が昨年の3倍に。なぜ今「トコジラミ」被害が増えているのか?

 

トコジラミとは

問題となっているのは、「トコジラミ(ナンキンムシ)」という名前の害虫。実際にはシラミではなく、カメムシの仲間に属しており、体長は約5ミリから8ミリ程度。

おもに屋内に生息し、人や物に付着したり、産卵したりして生息エリアを広げていく。

夜行性で、日中は寝具や家具、カーテンレールの隙間などに潜んでいる。そして夜になると暗い部屋で就寝中の人の血を吸う。どれだけ部屋を清潔に保っていてもトコジラミは入り込んできて、その存在に気づかないこともあるようだ。

刺されると赤く腫れ上がり、かゆみを引き起こす。さらに、気温が25℃を超えると、繁殖が活発になるという習性がある。

兵庫医科大学の皮膚科学・夏秋優教授は、この分野の研究の第一人者であり、長年にわたりトコジラミなどの吸血性昆虫を研究してきた。夏秋教授は現状に警鐘を鳴なす。

日本では江戸時代からトコジラミは存在していたとされるが、戦後は殺虫剤の普及や生活環境の改善により一時は絶滅寸前まで駆除が進んだ。ところが、約10年前から殺虫成分に耐性を持った“スーパーナンキンムシ”と呼ばれる個体が現れ、その結果被害が再び拡大しているのという。

一方、被害は再び広がり始めた背景について、夏秋教授はNHKの取材に対し、「人の往来の活発化」があると指摘。夏秋教授は、

「新型コロナの影響で、海外からの観光客や国内の旅行者が減るにつれて、トコジラミの拡大も例年に比べて落ち着いていました」

「しかし、去年の秋ごろから再び大勢の人が行き来することにより、例えば荷物に紛れ込んだトコジラミが各家庭に運ばれ、そして別の場所へと移りました。今後は、さらに広がっていくと思います」(*2)

とする。

対策

トコジラミに実際に刺された場合、どのような処置をすればよいのだろうか。しかしながら、夏秋教授は、トコジラミは、刺された痕だけではノミやダニなどと見分けるのが非常に難しいと指摘。

そのうえで、見分けるポイントとして、夏秋教授は、

「刺された場所です。トコジラミは衣服などで隠れていない露出されている肌から血を吸います。ダニは衣服の下にも潜って人を刺します。ノミも同じように手や足を刺しますが、猫などが媒介するため地面近くに生息していて、刺されるところが足に集中する傾向があります。トコジラミは寝ている時に露出している肌で血を吸うのです」

「腫れは基本的に1~2週間で引いていきます。蚊のように感染症を媒介しないとされていることから、市販のかゆみ止めを塗って様子を見て、症状がひどくなったり、大量に刺された場合はかゆみで不眠になったりするので皮膚科の受診を勧めています」(*3)

とする。

次にトコジラミを家に持ち込まないための対策はどうすればよいのか。害虫駆除の専門業者らでつくる「日本ペストコントロール協会」の小松謙之さんNHKの取材に対し、外出先から家に持ち込まないことが何よりも大切だと話す。

まず宿泊施設などを利用する際、トコジラミがいる可能性を考えて、部屋の四つ角や天井などを見てトコジラミの黒いふんのような物がついていないかを確認。

さらに、荷物は入り口付近にまとめて置き、できれば大きな袋などに入れてトコジラミが付着しないようにするなど、しっかりと対策を取ることが有効だとする(*4)。

その上で万が一、家に持ち込んでしまった場合は、プロポクスルやメトキサジアゾンなどの有効な成分が入った殺虫剤を入手し、部屋の四つ角や天井、家具の裏側など、トコジラミが生息していたり、通ったりする可能性が高い場所にまいて駆除する必要があるという。

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