ロシア軍のクラスター弾は不発弾の率が非常に高いと言われていますけれども、侵略者の側は使ってるわけですね。条約で禁止されるようなもの(米、露、中、ウクライナなど条約に署名していない国も多い)をウクライナ軍が使うべきでないという風な言い方で非難するのは、全く当たらないというふうに私は思います。先ほどいいましたように、アメリカがこれを供与した理由というのは、いろんな条件下で使うだろうということとともに、これ、よく考えてみると、F16の代わりなんですよね。
攻めていく側というのは被害が一般に大きいと言われますが、特に航空支援がない場合には、攻めていくのが非常に難しくなるというのが現代の戦争の常識と言われています。F16は戦闘機ですけれども戦闘爆撃機という位置付けができる飛行機ですから、それが航空優勢をとって、そしてロシア軍陣地に対して空爆を加えた上で、ウクライナの陸軍が攻め込んでいくということを多分イメージしていた…そのF16が簡単には供与されないものなので、まあ、パイロットの訓練とか、やってるようですが、それに代わるものとしてクラスター弾というのは、ウクライナ軍が自国の被占領地を解放していく上で、非常に重要な兵器という風に、まあおそらくアメリカ軍は考えたんじゃないかと。アメリカもウクライナもそう考えたということではないかと思います。
この手の話をやっていくときに、人道的な兵器ってあるんだろうかっていつも考えるんです。自動小銃は人道的でしょうか。クラスター弾というのは…。そのうんと果ての方に核兵器があるっていう見方もまあ可能ですよね。つまりその辺にいる人みんな巻き添えになるわけですよ、もし市民がいるところで使えばね。不特定多数の人たちに被害が及ぶような兵器、その極致は核兵器ですけれど、あるいは超大型爆弾なんていうのも、そうなるかもしれません。
そういう意味で今ロシア軍は何を、どういうことで使っているかというと、住宅地などに対するクラスター弾がその一つ、それからサーモバリック爆弾というもの、これは燃料気化爆弾とも言われますけど、中で衝撃波がパーッと続くような爆発の映像、もしご覧になった方がいれば覚えておられると思うんですけれど、その一定のエリアの中にいる人たちが、まあ人に限らずですけれども、生き物が呼吸困難になってしまうような恐ろしい爆弾ですね。これまさに不特定多数、そこら中にいる人たちを巻き添えするための爆弾ですよ。
それからもう一つあるのはテルミット焼夷弾。最初白リン弾ではないかと言われたもので、白リン弾も同じようなものですけれど、2,000度ぐらいの高温でマグネシウムが燃えながら落ちてくる焼夷弾ですね。あたり一面を焼き払うための、まさに不特定多数を攻撃する、これぞ「非人道兵器」、こういうものをロシアという侵略者は、ある意味堂々と使っているわけです。その辺のことをぜひお考えいただきたいというふうに思います。
(『uttiiジャーナル』2023年7月30日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)
この記事の著者・内田誠さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com