“核好き”自民政権の大罪。米国が今も「原爆投下を肯定」し続ける理由

 

実は正確ではない「日本が唯一の被爆国」という言説

よく、日本を指して「唯一の被爆国」という言われた方がなされる。しかし、実際にはそのことは正確ではない。

核兵器の被害にあった国は日本だけではない。1945年、アメリカはニューメキシコ州で、世界で初めての核実験を行い、以降もこれまでに2,050回以上の核実験を行ってきた(*1)。

アメリカは、ネバダ砂漠や太平洋で核実験を行ってきた。アメリカだけでなく、ロシアはカザフスタンや北極海で、イギリスはオーストラリアや太平洋の島国で、フランスはアルジェリアや南太平洋の仏領ポリネシア・タヒチで、中国は新疆ウイグル自治区で核実験を行う。

米プリンストン大などの研究チームは、1945年8月の広島と長崎への原爆投下に先立つ同年7月に行われた人類初の核実験「トリニティ」の放射線降下物(フォールアウト)が、爆発から10日後に周辺へ広がる様子などを再現したシミュレーションを作成(*2)。査読前の論文を、7月20日にインターネット上に公開する。

  シミュレーシ結果は、これまで影響が過小評価されていた可能性を示唆する内容であり、実際には放射性降下物は、米南西部のニューメキシコ州にあるトリニティ実験場から、全米50州のうち46州にまで、広がり、またメキシコとカナダ東部にまで広がっていた(*3)。

トリニティ実験は第二次世界大戦中にアメリカ政府が原爆を開発する「マンハッタン計画」の一環として、理論物理学者のオッペンハイマー氏が主導。ニューメキシコ州の砂漠地帯で、プルトニウム型原爆を高さ30メートルの鉄塔の上に固定させ、爆発させた(*4)。エネルギーは長崎原爆とほぼ同じ。

一方、論文によると、米本土ではトリニティ実験以降も、部分的実験禁止条約が発効する前年の1962年まで、西部ネバタ州で100回の大気圏内核実験が行われ、現地の住民の被爆と環境汚染をもたらしたという。

アメリカに原爆投下の謝罪を求めることができない日本

アメリカが日本への原爆投下を一向に反省しない、そして日本政府が米政府に対し、原爆投下の謝罪を求める“ことができない”理由の一つとして、日本が核兵器禁止条約に批准していないことが挙げられる。

核兵器禁止条約は、核兵器を「非人道兵器」とし、その開発と保有、使用あるいは使用の威嚇を含むあらゆる活動を例外なく禁止する条約だ。

条約の前文では、広島・長崎の被爆者や世界の核実験者がこうむった受け入れがたい苦しみと、核兵器廃絶に向けたこれまでの努力について言及されている。

また条約は、現在、核兵器を保有している国がそれらを廃棄するための基本的な道筋を示すとともに、核兵器の被害者の権利を定めるもととなっている。

核兵器禁止条約は、非核兵器国の主導のもと、三度にわたる非人道性を考える国際会議の開催、核軍縮に関する国連作業部会の開催、国連での核兵器禁止条約に向けた交渉会議を経て、2017年7月、国連加盟国の6割を超える122か国が賛同し、採択された。

そして、2020年10月24日、条約の批准国が50か国に達し、90日後の2021年1月22日、正式に条約が発効した。

日本は唯一に戦争被爆国でありながら、条約には批判的だ。日本政府は、アメリカの核兵器に守られる「核の傘」に依存する安全保障政策を理由に、核兵器禁止条約に反対する立場だ。

しかしながら、日米安保条約に各兵器に関する記述なく、現場の政治決断次第で、核兵器禁止条約に参加しつつ日米同盟を維持することが可能との主張も根強い(*5)。要は、単なる“思考停止”な訳だ。

日本人が#Barbenheimerのハッシュタグに文句があるのならば、アメリカではなく、いつまでも米国の核の傘に依存し続ける、世界でも稀な“核好き”の日本政府(自民党)に対し、毅然とした態度をとらなければならない。

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