すでに習近平政権に向けられている若者たちの怒りの矛先
しかし、既に若年層の不満や怒りの矛先は習政権に向いている。昨年秋、全人代が北京で行われた前後、一部の市民らによる不満がネット上で発見された。たとえば、北京では10月16日の全人代開幕直前の13日、北京市内北西部に高架橋から、「検査ではなく食料を、規制ではなく自由を、嘘ではなく尊厳を、文化大革命ではなく改革を!我々は奴隷ではなく市民だ!」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられる動画がネット上に流出した。現場からは黒い煙のようなものが立ち上り、男性が拡声器で習氏を批判するように叫ぶ声も確認できた。
そして、上海でも同じ時期、集まった市民らが「共産党退陣、習近平退陣」などと連呼し、ゼロコロナ政策を批判する動画が一時に流出し、一部は警察官と衝突したとみられる。
北京や上海で明らかになったことが、他の地域や都市でも発生していることは想像に難くない。中国を離れ、中南米のメキシコへ渡り、そこから陸路で米国に向かおうとする中国人も増えており、一党独裁体制への不満は募るばかりだ。
外から見ていると、習政権は台湾や半導体を最重要課題にしているかのように映る。だが、それは中国内政を無視した論理だろう。習政権にとってこの失業率というのは、自らの安定性を示す数値でもあり、失業率が高まれば高まるほど、政権の安定性は低下する。要は、失業率と政権安定性は反比例の関係にあると言っていい。習政権は国内経済を考えれば、逆に米国や日本に対しても過剰な対抗手段は取りにくいとも言えよう。
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