中国に「マイナンバー情報500万人分が大量流出」の深刻度。Google日本元社長が厚労省を猛批判のワケ

 

中国のネット上で誰でも見られる状態となっていた500万の個人情報

岩瀬氏によると、500万人にも及ぶ年金受給者のマイナンバーと、マイナンバーに紐づいた生年月日、電話番号、扶養者氏名、年収情報などの個人情報が中国に流出しており、2017年末の段階で、中国のネット上で誰でも見られる状態になっていたというのです。しかも、通報を受けた日本年金機構や厚労省は、その事実を確認しつつもひた隠しにして、2021年2月の国会での追及で流出を認めるに至るまでの3年以上にわたって、ずっと虚偽答弁を続けてきたのです。

詳しくは、上記にリンクを貼った岩瀬氏の告発記事や対談ビデオを参照していただきたいと思いますが、記事によると、「消えた年金問題」を引き起こした日本年金機構(旧社会保険庁)の杜撰な仕事ぶりや隠蔽体質は何も変わっていないことがよくわかります。さらには、監督官庁である厚労省も、事実を隠ぺいするための虚構のストーリー作りに加担し、流出した情報は「氏名とフリガナ」だけであるとのウソをついて事実の矮小化を図った、というとんでもない実態がスクープされています。

当時の報道で、日本年金機構が使っていた「SAY企画」という事業者の名前には聞き覚えがあるかもしれませんが、この事業者が、禁じられていた中国の事業者への再委託を行い、それを年金機構が黙認したのがすべての始まりだったようです。国家の安全保障を脅かす大問題を引き起こしておきながら、それを自分たちの保身のために、年金機構と厚労省が一緒になって無かったことにしようとするストーリーには身の毛がよだちます。

本来なら、情報流出の事実を直ちに広く告知して国民への注意喚起を促すと共に、少なくとも情報流出した人たちのマイナンバーを新しく付け直すなどの対応を行うのが行政機関としての責務だと思いますが、未だにそのようなアクションはとられておらず、本問題については、今日に至るまで何の決着もついていないようです。

流出したマイナンバーや個人情報を中国政府が捕捉していることは間違いないでしょうし、さらには、中国のネット上から犯罪者集団の手にわたり、「特殊詐欺」などの犯罪に使われている可能性も否定できません。実際、全国で発生している特殊詐欺の被害状況を分析した警察資料によると、被害者全体に占める65歳以上の高齢者率(年金受給世代率)は、2017年10月以降、急激に増えているそうです。

他国へ、マイナンバーを含む個人情報を流出させて国民の安全に関わる深刻な問題を引き起こした上、それを隠蔽、放置しておきながら、何食わぬ顔でマイナンバーやマイナンバーカードの普及を図ろうとしているのが今の日本政府なのです。政治に清廉潔白を求めるつもりはありませんが、最近の日本政府の出鱈目ぶりは一線を超えています。少しでも信頼できる政府を取り戻すためには、まずは我々一人一人が、政府のウソ、ごまかし、出鱈目を見逃さないこと、許さないこと、忘れないことが肝要だと思います。

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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