肝心の中国経済が崩壊か。独裁国家の下に集結したグローバルサウスを待ち受ける困難

 

2.実は世界の組み立て工場でしかない中国

先進国は産業革命に成功し、経済成長を果たし、お金持ちになった国です。ほぼ全ての産業は先進国から始まり、労働集約型産業から人件費の低い国に移転しました。

現在、グローバルサウスと言われている国は、二つのグループに分かれます。

第一は、先進国に原油、天然ガス、綿花、羊毛等の資源を輸出している国々です。いわゆる資源国です。

第二は、先進国の下請け工場です。先進国から受注し、輸出して外貨を稼ぎます。下請け工場に仕事を出す場合、元請け工場は下請けが独立できないように工夫します。重要な素材や部品は下請けに生産させず、その調達先も厳しく管理します。あるいは、特許や商標等を持つことでビジネスの権利を守ります。

中国は「世界の工場」と自慢していますが、実は世界の組み立て工場であり、重要な素材や部品は先進国から輸入しています。中国の高鉄も車軸や車輪等は日本から輸入しています。

二つのグループに共通するのは、先進国に依存することで、効率よく稼げるということです。資本もノウハウも全て先進国が提供してくれます。あとは、注文通りに資源を輸出し、製品を輸出すればいいのです。

先進国では、グローバルサウスに依存していることばかりが強調されますが、実はグローバルサウスも先進国に依存しているのです。しかし、グローバルサウスは、先進国に依存しないと言い出しました。これは可能でしょうか。確かに、資源があって、組み立て工場があれば、既存の商品は作れます。しかし、その多くはコモディティ商品であり、常に価格競争に晒されています。

3.台湾有事でも日本への石油供給を止めない中東産油国

資源産出国は、資源を買ってくれる国があってこそ、豊かさを享受できます。しかし、世界中で化石燃料を使わなくなれば、石炭、石油、天然ガスの産出国は大きな打撃を受けるでしょう。資源の価値もなくなります。

サウジアラビアの最大の顧客は中国です。中国は、石油を大量に輸入し、世界の工場を回していました。また、穀物も大量に輸入しています。かつて、中国は農業国でしたが、土壌汚染や農民工の流出等により、すでに国内重要を満たすだけの穀物はありません。

中国のバブル景気下の製造業、不動産開発業では膨大な資材、部品、素材、機械等を輸入していました。重要な部品や中国手は生産できない資材等は、先進国から輸入していました。

中国とサウジアラビアが接近したことで、米国べったりの日本を心配する声もあります。台湾有事で、中東産油国が日本への石油供給を止めるのではないか、という心配です。

しかし、日本の原油輸入は長期的かつ計画的な契約をしています。これは生産者にとってありがたい顧客です。売上の計画が立ち、しかもキャンセルされることはありません。

中国の原油輸入量は多かったでしょうが、日本のような買い方はできません。ですから、原油産出国の全ての原油を中国が買ってくれるなら別ですが、今後不景気となり、原油の重要が減れば、その分をどこかの国に売らなければならないのです。

このあたりの調整は、すでに商社が動いているはずです。新たな油田開発も並行して進めているでしょう。目先の需給バランスに一喜一憂するのではなく、輸入先のバランスを考えています。もちろん、資源国ともコミュニケーションを保っていると思います。

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