2022年時点で、訪問介護員の有効求人倍率は過去最高の約16倍。施設の介護職員の約4倍と比べても、その人手不足が突出しています。現役の訪問介護員の24.4%が65歳以上、75歳以上も12.2%と1割超で、人手不足が今後解消する見込みはほぼありません。利用者さんの中には、訪問介護ヘルパーさんとしか社会の接点がなく、ヘルパーさんがいるからこそつながっている命もあるのに、介護の労働現場には一筋の光もないのです。
2019年11月1日、現役の訪問介護ヘルパー3人が国を相手どり訴えを起こすという前代未聞の出来事がありました。
原告の訪問介護ヘルパーたちは「登録型訪問介護員」で、労働基準法違反の状態=「0時間契約」で働かされていました。「0時間契約」とは、就労時間の保証がなく従って賃金保障もないまま、その時々に求められた時間だけ働く雇用形態です。
欧米でも日本同様に訪問介護員がいますが、日本と大きく違うのは地域の協力です。地域社会の一員として見守る制度があり、一方で「自立した生活」を維持するためのリハビリ制度が充実しています。
日本の介護制度はいい点も多く、欧米の人たちが見学に来たり、参考にするケースはかなりあります。しかしながら、「地域社会と共に」という視点と意識は、むしろ低いように思います。たとえば、日本の高齢者は圧倒的に入院期間が長いうえに、日本の介護施設は施設内で完結できるように設計されていますが、欧米の場合、入院は特別な場合のみで、施設も地域の施設として、地域の住民と触れ合う機会がごく普通にあるそうです。
もちろん施設形態によって違いますし、日本以上に「お金」があるかないかで受けられるサービス、住居に大きな差があります。それでもやはり、世界のどこの国よりも日本は超高齢社会なのですから、もっと高齢者と共に暮らせる社会を作る必要があると思うのです。
そもそもなぜ、超高齢社会なのに社会のスタンダードは、「自立した元気な人」のままなのか?物理的なバリアフリー化は進められていますが、心のバリアフリーは、まだまだ未熟です。
「これは家族の病気」――。この言葉の意味を1人でも多くの人に理解してもらいたいと心から願います。
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