ブルース・ウィリス一家の決断。夫の「家族の病気」を公表した理由

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『ダイ・ハード』シリーズや『アルマゲドン』といったハリウッド映画で知られるブルース・ウィリス氏。昨年3月に失語症のため俳優業を引退しましたが、今年3月には「前頭側頭型認知症」という認知症と診断されたことを家族が公表し、9月25日には夫人が出演したテレビ番組でその介護生活を赤裸々に語り大きな話題となりました。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、「家族の病気」と言われる前頭側頭型認知症について詳しく解説。その上で、世界一の超高齢社会で認知症患者数も増加している日本が進むべき道を考察しています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「家族の病気」と共に暮らす時代

今回はCNNで繰り返し報道されている元映画俳優のブルース・ウィリスさんに関するニュースから取り上げます。今年2月、「ダイ・ハード」シリーズの主人公ジョン・マクレーン役などで知られ、昨年引退したブルース・ウィリスさんが認知症と診断されたことを家族が公表しました。日本のネットニュースでも話題になっていたので、ご存知の方も多いと思います。

「認知症」と聞くとアルツハイマー病を思い浮かべるかもしれませんが、ウィリスさんは「前頭側頭型認知症」です。これは脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで発症する認知症で、発症年齢が比較的若いとされています。初期では記憶障害はほとんどない一方で、まるで人が変わってしまったように性格が変わり、暴言や暴力が出ることも多く、対応が極めて難しいのが特徴です。

25日に妻のエマ・ヘミングさんがテレビ番組に出演し、介護する家族の辛さを告白。「これは家族の病気だと言われるけれど、本当にその通りです。この病に対する認識が高まることを願っている」と語ったそうです。

「認知症=記憶がなくなる」という点ばかりが強調されがちですが、日常的に接する家族には記憶が消えることと同じくらい、あるいはそれ以上に、記憶喪失以外の症状に悩み、苦労するという状況を、1人でも多くの人に知ってもらいたかったのだと思います。

欧米は日本とは異なり、「老い」をポジティブに受け止める傾向が高い。それでも「家族の病気」という言葉をあえて公の場で使ったご家族の心情を考えると、個人的にはかなり衝撃でした。米国ではオバマ政権の時から精力的に認知症対策に乗り出していますが、介護をする家族のケアなどはどちらかといえば後進国です。

そんな中“介護先進国”の日本では「訪問介護事業者」の倒産(2023年1-8月)が過去最多の44件に上ることがわかりました。深刻なヘルパー不足に加え、燃料代や介護用品など、最近の物価高が重くのしかかっていることが原因だとされています。

訪問介護員は、介護にとっての「最後の砦」とされ、人手不足が深刻な介護現場の中でも、最も人手が足りていないことは広く知られています。「絶滅危惧職」と表現する人たちもいるほどです。

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