私たちが今口にしている食べ物はどうやって生まれてきたのか?

 

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

被子植物は霊長類に食べてもらうために、肉厚で色鮮やかな果実を作るように進化していった。一方、霊長類も果実を見つけやすいように視覚が発達したと考えられている

霊長類の祖先が果実を食べ始めたことで失ったものもある。それは、ビタミンCを作る能力だ。ビタミンCは動物の生存に必須であるため、ほとんどの動物は自分でビタミンCを作ることができる。ところが、果実にはビタミンCがたくさん含まれていたことから、霊長類の祖先はビタミンCを作ることをやめてしまったのだ。これは、果物や野菜などのビタミンCを含んだ食べ物を食べ続けなければならないことを意味している。後述するが、このことが大航海時代に多くの船乗りの命を奪うことになるのである

脳が大きくなるためには、その材料となるタンパク質や脂質を大量に摂取する必要がある。肉はタンパク質の固まりであり、脂質も多く含まれることから、脳を大きくするためには格好の食料だったのである

人類が火の利用を始めると、脳の拡大はさらに加速した。火で調理すると、食べ物は消化吸収されやすいかたちに変化し、エネルギーの摂取効率が格段に上昇するからだ

大きくなった脳領域の一つが、「ブロードマン10野」と呼ばれる大脳の最前方に位置するところだ。ここは脳の最高中枢といわれる前頭前野の一部で、複数の情報から様々な判断を行ったり、他人の感情や考えを推し量ったりする役割を果たしている。ヒトは集団の力で獲物を狩るが、その時にはこのブロードマン10野が大活躍しているのだ。そのため、この脳領域の能力が高い集団ほど、多くの獲物を得たと考えられる。(中略)ブロードマン10野が発達したヒトであるが、その結果、美食を追求するという性も負ってしまった。ブロードマン10野には、幸せな感情とその時の記憶を結びつけ記録するという役割もあるからだ

古代ローマは美食で有名であり、その食卓には様々な食材から作られた色とりどりの料理が並べられたという。古代ローマ人は征服した土地の食べ物を取り入れることが一般的であり、領土拡大の原動力となったものの一つが、新しい食べ物を手に入れたいという食いしん坊の気質だったとも考えられる

目次は、歴史の古い順に並んでいるだけなので、これで面白くなるのかと疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、いやいや、これほど知的刺激に溢れる食の教養本はなかなかないと思います。

われわれ人間が、どうやって食を発展させてきたのか、なぜ美味の追求が文明を作ったのか、サイエンスと歴史が交差する、じつに面白い読み物です。

これを読むと、今の日本人に足りないものが何なのかも、何となく見えてくるかもしれませんね。

ぜひ、読んでみてください。

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Amazon.co.j立ち上げに参画した元バイヤー、元読売新聞コラムニスト、元B11「ベストセラーBookV」レギュラーコメンテーター、元ラジオNIKKEIレギュラー。現在は、ビジネス書評家、著者、講演家、コンサルタントとして活動中の土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介。毎日発行、開始から既に4000号を超える殿堂入りメルマガです。テーマ:「出版/自分ブランド/独立・起業」

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【著者】 土井英司 【発行周期】 日刊

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