面倒くさがりが酷くなったホンマでっか池田教授が「楽しい」と思えること

 

今年は例年になくウグイスが多かった。以前にも書いたかもしれないが、ここらあたりのウグイスは「ホ~ホケキョ」ではなく「ホ~ヨンジュビョ」と鳴く。まあ高尾方言だね。たまに「ホ~ホケキョ」と正統的に鳴くやつがいるが、仲間外れにされないか心配になる。ともあれ、今年は春先から7月の初めくらいまで、いつもウグイスの鳴き声が聞こえていた。晩唐の詩人、杜牧に「江南春」と題する七言絶句がある。

千里鶯啼緑映紅(せんりうぐいすないて みどりくれないにえいず)
水村山郭酒旗風(すいそんさんかく しゅきのかぜ)
南朝四百八十寺(なんちょう しひゃくはっしんじ)
多少楼台煙雨中(たしょうのろうだい えんうのうち)

出だしの二句は素晴らしいが、三句目がちょっと説明的かつ冗長で残念である。ちなみに八十寺は「はっしんじ」と読むらしい。同じ杜牧でも晩秋の情景を詠んだ「山行」は古今の名詩である。

遠上寒山石径斜(とおくかんざんにのぼれば せっけいななめなり)
白雲生処有人家(はくうんのしょうずるところ じんかあり)
停車座愛楓林晩(くるまをとどめて そぞろにあいすふうりんのくれ)
霜葉紅于二月花(そうようは にがつのはなよりくれないなり)

何で突然漢詩など思い出したのかというと、高校生の頃漢詩が好きで、教科書に載っていたものは全部暗記していたくらいなのである。漢文の先生は渡辺弘一郎先生で、アララギ派最後の歌人として清水房雄の筆名で活躍された。私は渡辺先生に可愛がられ、授業中に「漢詩を吟じろ」と命じられて閉口した覚えがある。

みんなの前での詩吟はさすがに恥ずかしい。先生は私の父と高等師範学校の同級生で、そんな縁で目をかけて下さったのだろうが、高校生にとっては有難迷惑だよね。先生は101歳の天寿を全うされたが、亡くなる数年前、私の思い出話をされていたということを人づてに聞いてちょっと嬉しかった。

閑話休題。例年よく鳴いているホトトギスは今年は少なかった。カッコウはこの辺りでは稀で、ここ何年も聞いたことがない。コジュケイはまだ寒いうちからよく鳴いていた。沢山棲息しているのだろうが姿を見たことはない。暑さが一段落した10月になって時々鳴き声が聞こえるが、恋の季節はとっくに過ぎただろうに、季節外れの恋に狂っている奴がいるのだろうか──(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』2023年10月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・池田清彦さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

池田清彦この著者の記事一覧

このメルマガを読めば、マスメディアの報道のウラに潜む、世間のからくりがわかります。というわけでこのメルマガではさまざまな情報を発信して、楽しく生きるヒントを記していきたいと思っています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 池田清彦のやせ我慢日記 』

【著者】 池田清彦 【月額】 初月無料!月額440円(税込) 【発行周期】 毎月 第2金曜日・第4金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 面倒くさがりが酷くなったホンマでっか池田教授が「楽しい」と思えること
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け