在日米軍の要請で編成。ドラマ「VIVANT」で注目された“別班”の正体

 

相次ぐ「改善が期待できない」セクハラ・パワハラ

性被害を受けた元自衛官の五ノ井里奈さんは、1月、国と加害者の元隊員5人を相手取り、計750万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こす。

加害者のうち強制わいせつ容疑で書類送検された3人は否認して不起訴となったが、昨年9月、検察審査会が不起訴不当を議決し、再捜査の対象に。

五ノ井さんは退職後の昨年6月、性的発言や胸を触られるなどのセクハラ被害を実名で告発。

陸自は事実を認めて謝罪、5人を懲戒免職とし、また訴えを受けたのに十分な調査をしなかったなどとして上司にあたる中隊長ら4人を停職などの処分にする。

2月21日には、陸上自衛隊松山駐屯地で勤務していた男性がうつ病で自殺したのは過重勤務やパワハラが原因であるとし、両親が訴えていた裁判で、地裁は国の賠償責任を認める。

防衛省は8月18日、省と自衛隊でのハラスメントに関する「特別防衛監察」の結果を公表。

それによると、被害の申し出は1,325件にのぼったものの、「改善が期待できない」などとして6割以上のケースで相談窓口を利用していなかったことが判明した。

自衛隊を取材し続けているジャーナリストの三宅勝久さんは、自衛隊内での暴力やハラスメントに関する多くの過去の裁判で取材を行い、『絶望の自衛隊』(花伝社)という本を執筆。

他方、2020年10月に開催された財務省財政制度等審議会の部会で提出された資料によると、自衛官の中途退職者は過去10年間で約4割増加し、年間約4,700人にも上る。この数は、新たに採用される人数の3分の1に相当する。

一方で、近年では国民の自衛隊への好感度は高まっている。しかし、自衛隊の広報PRの結果と現実とのギャップが、隊員個人の「失望」や「絶望」につながっている。

自衛隊から高校・大学卒業時に届く「赤紙」

今、進路を選ぶ若者たちのもとに、自衛隊からのダイレクトメール(DM)が届き、その様子が戦時中の「赤紙」との声も上がっている(*2)。不気味な感じを受ける人もいるかもしれない。

DMは、全国の自衛隊地方協力本部が、18歳の高校卒業生や22歳の大学卒業生に送っている。

自衛隊法では、都道府県知事や市町村長が自衛官の募集事務の一部を担当することが規定されており、個人情報である「氏名」「生年月日」「性別」「住所」の提供が、多くの市区町村で紙や電子媒体を通じて行われている。

以前、多くの自治体は住民基本台帳の閲覧や書き写しを認める程度だったが、この状況が大きく変わる。

きっかけは2019年2月、安倍晋三首相(当時)が自民党大会で「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している」と発言したこと。

政府は2020年12月に、「市区町村長が住民基本台帳の一部の写しの提供が可能であることを明確化する」という閣議決定を行い、翌年2月には防衛省と総務省が各自治体に問題がないことを通知することを決定。

なお、情報提供を望まない人を名簿から除外する「除外申請」制度も存在しているものの、その制度が周知されているとは言い難い状況だ。

背景には、自衛官の応募減少の傾向ある。2023年版の防衛白書によれば、2022年度の自衛官の応募者数は7万4,947人。前年度の8万4,682人から約1万人も減少した。

また、自衛官の定数割れも長期にわたって続く。2022年度末時点での定数は約24万7,000人だったが、現在は約22万8,000人。

しかし、人手不足は自衛隊だけの問題に限らない。むしろ、セクハラやパワハラを放置してきた自衛隊自身が、人員不足の根本的な要因となっている。

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