次に「勝敗論」で見てみましょう。
私は2022年2月24日のウクライナ侵攻前、プーチンについて二つの話をしていました。
一つは、プーチンがウクライナ侵攻を決断する可能性がある。
もう一つは、プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、【 戦略的敗北 】は不可避である。
「戦略的敗北」とは、「ウクライナとの戦闘に勝てない」といった「戦術的意味」ではありません。
たとえば、ロシアは2014年3月、ウクライナからクリミアを鮮やかに奪いました。
これは、間違いなくロシアの【 戦術的大勝利 】です。
ですが、一方でこれは【 戦略的敗北 】でもありました。
というのは、制裁で、ロシア経済がまったく成長しなくなったからです。
プーチンの1期目2期目、ロシアのGDP成長率は、年平均7%でした。
それが、2014年のクリミア併合以降は、年平均1%程度まで下がりました。
これが【 戦略的敗北 】の意味です。
今回のウクライナ侵攻でも、同じことがより大規模に起こりました。
プーチンの戦略的敗北について、書き出せばキリがありません。
ここでは、少し例を挙げておきましょう。
まず、ロシアが中国の属国になったことが挙げられます。
どういうことでしょうか?
ウクライナ侵攻に恐怖した欧州は、ロシア産原油、天然ガス、石炭輸入を大幅に減らしました。
さらに、ロシアの主要銀行は、SWIFTから排除された。
困ったロシアは、中国に助けを求めました。
結果どうなったのでしょうか?
中国は、ロシア産原油、天然ガスを【 激安 】で、【 人民元 】で、中国版SWIFT【 CIPS 】を使って輸入するようになった。
これで、ロシアは完全に【 人民元圏 】に組み込まれてしまった。
プーチンは、習近平に逆らえなくなりました。
一つわかりやすい例があります。
今年5月、「中国中央アジアサミット」が中国西安で開催されました。
ここで習近平は、「【 中国中央アジア運命共同体 】を創る!」と宣言したのです。
『東京新聞』5月19日付。
中国の習近平国家主席は19日、陝西省西安で開かれている中央アジア5カ国との首脳会議で演説し、中央アジアと「より緊密な運命共同体を構築する」と強調した。
中央アジア5か国とは、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスのこと。