保身のために「ガザ攻撃」を続けるイスラエルの非道。無法攻撃を許す国際社会の無力と米国のジレンマ

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ハマスによるイスラエル奇襲から1ヶ月あまり。自衛を超えたと言わざるを得ないイスラエルの激しい攻撃により、ガザ地区では多くの市民、とりわけ子供が犠牲となっています。今後この紛争はどのような推移を辿るのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、同地の絶望的な現状を紹介。さらにその状況を引き起こしている国連や諸国の機能不全ぶりと、それらを引き起こしている各々の思惑について詳しく解説しています。

死にゆく罪なき子供たち。地獄と化したガザを救えぬ国際社会

「ガザが子供たちの墓場になってしまっている」

これはグティエレス国連事務総長の表現ですが、ガザですでに1万人を超える死者のうち、6割が女性と子供だと報告されています。またあまりの凄惨な状況のため、エネルギー・電力不足のために命を落としていく新生児の数も、非常に残念なことに日々増えています。

それに加え、2,500人ほどがまだがれきの下に埋もれ、“行方不明”になっていますが、その半数も子供たちであるという情報が上がっています。

あまり好きな表現ではないのですが、グティエレス国連事務総長が表現するように、ガザは今では罪なき子供たちの墓場になってしまっています。

完全に破壊し尽くされたガザの街の様子が映し出される度、国際世論はイスラエルへの非難を強めていきますが、それでもイスラエルのネタニエフ首相と閣僚たちは一向に耳を傾けず、「ハマスの壊滅の日まで戦う」と攻撃の手を緩める気配は見当たりません。

イスラエルに対して唯一影響力を発揮できると言われているアメリカ政府も、バイデン大統領がネタニエフ首相に対して3日間の人道のための一時停戦を要請したり、ブリンケン国務長官が中東各国の意見や姿勢を携えてイスラエルに一時停戦を呼び掛けたりしていますが、イスラエルにはこの要請に応える気配が見えません。

イスラエルは次第に孤立を深め、もう独自路線をひた走ることに決めたように映ります。

イスラエルの唯一の擁護者であるアメリカ政府も、国内で広がる反イスラエルの抗議の声を懸念しつつも、来年秋に選挙を控え、大きな政治的な票田となるキリスト教福音派(ユダヤとともにあり、聖地エルサレムを守ることが聖書を通じて信者たちに課された義務であると説く宗派で、数千万人の信者を米国内に抱えている)の機嫌を損ねるわけにはいかないこととの板挟みで、イスラエル政府に対して、あまり強い態度に出られなくなっているというジレンマに陥っています。

そのアメリカ政治のジレンマと行動の遅延が、日々ガザでの悲劇を生んでいると思われます。

欧米は対ウクライナ支援に当たっては一枚岩の結束を示すことが出来ましたが、対イスラエルについては、イスラエルの自衛権は認めるものの、イスラエルによる反撃と報復は自衛の範囲を超えているというのが共通した見解で、特に欧州各国は、人権擁護を外交方針の最前線に置く姿勢と、これまでにもガザの自律のための支援を先導してきたことから、アメリカとは距離を置き、イスラエルを非難するようになってきています。

今週都内で開かれたG7外相会合(日本が議長国)の場でも、イスラエルの自衛権についての考慮はされたものの、主題はガザ市民の人権擁護と人道支援の迅速な実施が喫緊の課題とされ、即時停戦が勧告されましたが、イスラエルとしては、その声にも耳を傾ける様子はありません。

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