米大統領選を控え「荒れる2024年」を予感。米中間の“不穏な動き”とは?

 

制裁などで追い詰められた国は突破口を求めて奮闘し、その結果として自国技術を発展させたり、別の調達ルートを開拓して制裁の痛みを解消してしまうケースがほとんどだ。そして、その過程ではサプライチェーンの再構築というコストを世界は強いられてきた。

中国の通信大手・華為科技(ファーウェイ)はアメリカの半導体技術から排除され、3年の雌伏を経て自ら7ナノの半導体を開発してしまった。米半導体メーカーはファーウェイという顧客を失い、世界も混乱のコストに見舞われた。

インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)やエヌビディアのジェンスン・フアンCEO、クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOは今夏、ワシントンで開かれた会合で、輸出規制はむしろ半導体産業における米国のリーダーシップを損ねる恐れがあると警鐘を鳴らしたのは有名な話だ。だが、こうした政治が絡んだ応酬では、感情が理性に勝るのが常だ。それは半導体分野に限った話ではない。

今週、アメリカのニコラス・バーンズ駐中国大使が発した「中国は、アメリカと協力して月面探査をするつもりはない」との発言をめぐる米中の応酬も典型的だ。

国家宇宙局の報道官は「中国は宇宙分野の国際協力を重視しており、アメリカとの協力にも一貫してオープンで包摂的な態度をとっている。アメリカとの協力を制限する規定など設けていない。協力が進まない理由はむしろアメリカにある」と即座に反論した。

1998年のコックスレポート以降、宇宙技術から徹底して排除された経験から、中国には被害者意識が強い。それだけにバーンズ発言には敏感に応じたのだろう。

また農産品でもアメリカの嫌がらせに中国がいきり立つ場面が見られた。きっかけは共和党のリック・スコット上院議員が米商務省に書簡を送り、中国産ニンニクに対する調査を要求したことだ。スコット曰く、「中国から輸入しているニンニクは非衛生的な環境で栽培されている」ため「中国産ニンニクは国家安全保障を脅かしている」というのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年12月24日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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