「ふと気づけば第三次世界大戦」2024年危機に本気で備え始めた指導者たち

 

アゼルバイジャン・アルメニア間で高まる緊張

長年続いてきたナゴルノカラバフ地域のアルメニアによる実効支配に昨年、ピリオドが打たれ、やっと国際法上領有権を持つアゼルバイジャンにナゴルノカラバフが戻されました。 圧倒的な武力をもってアルメニア系住民をナゴルノカラバフから追い出したアゼルバイジャン政府ですが、トルコからの支援を受け、強化された軍隊と政府は、このまま、ロシアの支持を失ったアルメニアに圧力をかけ、自国の勢力圏を拡げようという企みを持っているとの情報が入っています。 今のところ、アゼルバイジャンがアルメニアに侵攻するという状況ではありませんが、年末にナゴルノカラバフ紛争後、初めて行われたアルメニアのパシニャン首相とアゼルバイジャンのアリエフ大統領が直接会談した際、そこに居合わせた人たちによると「表面上は友好的な雰囲気を醸し出していたが、実際には双方に対する牽制合戦が行われ、両国ともなかなかナゴルノカラバフ紛争の矛を収める気はない様子だった。」とのことです。 パシニャン首相(アルメニア)は、ナゴルノカラバフ紛争後、「弱腰」と国内で糾弾されましたが、何とか持ち直している立場ですので、アゼルバイジャンに対して強気の態度を取らざるを得ませんが、軍事同盟を結んでいたロシアからは関係を切られ、頼りのアメリカも、トルコをあまり刺激して前面に出したくないという思惑から、期待していたほどアルメニアを支持してくれないという現実に直面していると言われています。 アリエフ大統領(アゼルバイジャン)は、すでに4期目の任期を迎えており、権力基盤は強固であり、かつ“トルコ系でイスラム教シーア派”というデモグラフィーを活かし、トルコからの援助と支援を受けつつ、イランとも緊密な関係を保つという特徴を活かして、トルコとイラン間でデリケートな外交バランスを取りながら地域での存在感を高めています。 また、ロシア・ウクライナ戦争でユーラシア大陸のエネルギー事情が滞っている中、重要な天然ガスパイプラインに近接するナゴルノカラバフを取り戻したという立場を受けて、パイプラインの安全確保という旗印の下、積極的な外交を行っています。 アルメニアとアゼルバイジャンが抱える課題と利害は一致しておらず、現在は非常にデリケートなバランスで和平と安定が保たれている状況ですので、何らかの偶発的な事件でも起こった暁には、一気に紛争が勃発する可能性が懸念されます。なにぶん、今、歯止めとなるような国が存在しないので。

ミャンマー情勢・スーダン内戦・コンゴ内戦など

これらの案件については、継続案件のため、あまり新しい情報は入ってきていませんが、共通していることは中国の影響力が高まっていることでしょうか。 中国の関心は、ミャンマーを除けば、ピュアに経済的な利権の拡大と外交的なパートナーシップの確立と言われていますが、その実現のために、ミャンマーでも長年見られたように、すべての有力な勢力とほぼ均等な距離でつながりを維持しておくという姿勢が貫かれています。 直接的に戦闘に関与することはありませんが、誰が権力の座についてもすぐにパートナーシップを結び、しっかりとインフラ整備からサービスの提供まで、経済的な利益を先取り、または独占する基盤を築いています。 現在、国連による調停・仲介がどのケースでも不発に終わっており、半ば見捨てられた状態になっているのがこれらの紛争ですが、国連での対応とは一線を画して、独自の関与を中国は行っているものと思われます。 残念ながら、紛争が継続していることで潤うという構図が出来上がってしまっているため、中国のみならず、戦略的無関心を貫くアメリカも欧州各国も、政治的な介入を行わず、紛争の傍ら、blood diamondやレアメタルの確保に勤しんでいます。 まさに大きな矛盾が存在する悲劇の紛争がこれらに代表されると思われますが、残念ながらその不条理と矛盾は今年も正されることはなさそうに感じています

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