プーチン露が総攻撃へ、敗北確定ウクライナ。西側メディアの「大本営発表」に騙され続けた世界

 

戦争を勝利で終わらすためにプーチンが仕掛ける総攻撃

そしてそのプロセスとタイムラインに大きな悪影響を与えそうなのが、「もしトラ」現象です。

これはご存じのように、もしトランプ氏が再び大統領の座に返り咲いたら…という想定ですが、すでに彼が公約で述べているようにアメリカの対ウクライナ支援はキャンセルされるだけでなく、欧州各国とのパートナーシップも再考するという動きに出ることが予想されるため、ロシアに対する包囲網も恐らく解かれ、NATOの抑止力にも陰りが見えることになる可能性が高まります。

もしそうなったら…バルト三国や北欧諸国、中東欧諸国に対するロシアのちょっかいが強まることが予想され、広域欧州地域の安定は損なわれることになりかねません。

ウクライナの外ですでにウクライナにとってアンハッピーな状況が発展してきているのですが、戦闘の長期化と犠牲の拡大は確実にウクライナ軍の士気を低下させ、国民の抗戦意欲も削いでいます。

そこに止めを刺したのが、国民的な英雄でもあるザルジーニ前統合参謀本部議長の解任(辞任・交替)でしょう。

退任時にはゼレンスキー大統領と笑顔で肩を組む写真を掲載し、いかにも円満な退任であるかのように繕っていますが、戦闘が継続している最中での交代は異例と言わざるを得ず、ウクライナ軍の士気にも関わります。

特にザルジーニ氏は2014年のロシアによるクリミア併合以降、欧米式の兵法と戦略を積極的に学び、ゼレンスキー政権で統合参謀本部議長に就任してからはウクライナ軍を戦える軍隊に作り替えるために新しい戦い方を浸透させてきたことと、それが対ロ抗戦当初は大きな戦果を上げたことで国民的な人気を獲得しました。

そのザルジーニ氏の後任は、旧ソ連軍で訓練を受けた旧来型の戦術を得意とするシルスキー氏になりましたが、戦術と戦略に大きな変化が生じることは確実ですし、シルスキー氏自身、東部戦線で指揮を執っていて、ロシアに押し返された張本人でもあるため、軍の士気高揚に対する期待は皆無と言わざるを得ません。

そこに著しい兵員と兵器不足の深刻化と弾薬の枯渇という致命的な条件が重なり、ウクライナの戦略専門家の表現を借りると「このような状況でどうやってロシアと戦うのだ」と嘆くほどの惨状と言えます。

そのような窮状をつぶさに把握しているのか、ロシア軍は春から夏にかけてウクライナに総攻撃をかけるという情報が上がってきており、確実に戦争を勝利で終えるためのfinal blowをかけにきているようです。

その対象は「すでに支配を拡大している東南部4州の完全支配の確立」から、「ウクライナ全土をロシアのコントロール下に置くための総攻撃」という見方もあり、これはふたを開けてみないと分かりませんが、そのための最新鋭の兵器が続々と集められているという情報が多数あることから、それが現実味を帯びてきているように感じます。

軍事的な攻撃を着々と用意しつつ、プーチン大統領は停戦交渉という外交戦略も活発化させています。今年に入り何度も「アメリカ政府と水面下で折衝している」と明かしたり、「ウクライナが停戦交渉に応じるように、アメリカ政府が説得すべきだ」と要求してみたりと、かなり強気の戦略を打ち出しています。

プーチン大統領とロシアがテーブルに乗せている“停戦のための条件”は【実効支配している東南4州とクリミアを正式にロシアに譲る協定をロシア・ウクライナ間で締結すれば、ロシアは軍を“ウクライナ”から撤退させて、即時に停戦に応じる用意がある】という内容と伝えられています。

その真意は、ロシア政府関係者によると「プーチン大統領の頭と心の中では、ウクライナはロシアと一体の存在であり、誰もその魂も精神も切り離すことはできないし、決して許されないと信じており、この信念に揺るぎがないため、ウクライナがロシアと決別するシナリオも、ウクライナがロシアから独立した存在であることも許さない」ということのようです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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