能登地震の被災地でも進められる利用。東日本大震災から13年経って見えてきた「グループ補助金」の本末転倒

Tsunami,Destruction,Tohoku,Japan,Photo,Taken,March,20,2011
 

1万5,000人以上の命を奪い、遺された人々の生活にも甚大な被害をもたらした東日本大震災。政府は被災した中小企業の再建を支援すべくグループ補助金制度を設けましたが、震災から13年経った今、その「問題点」が露呈する事態となっています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合さんが、次々表面化する同制度のネガティブな側面を紹介。人のために作った制度が人を苦しめている現実を「本末転倒」と批判的に記しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「人」のためが「人」を苦しめる被災地

東日本大震災から13年。早いようで長く、長いようであっという間に時が流れていきました。

本メルマガでは災害と高齢化問題を何度も取り上げてきましたが、この国はいつになったら「日本は“超高齢社会”である」という現実に、正面から向き合ってくれるのでしょうか。

東日本大震災で被災した中小企業の再建を支援するために創設された「グループ補助金」(中小企業等グループ施設等復旧整備補助金)のネガティブな側面が被災地の急速な人口減少と高齢化で、次々と表面化しているのです。

グループ補助金は、複数の中小企業がグループを構成して地域経済・社会の復旧・復興の促進といった「まちづくり」を目的に設置され、早期復興に大きく貢献したと高く評価されていました。しかし、長期間商売を続けない限り、補助金の返還を命じられてしまうのです。

例えば、鉄筋コンクリート事務所の場合、その耐久年数が50年と決められているので、震災時50歳の経営者は100歳まで事業を続ける必要があります。仮に経営者が急死し廃業を余儀なくされたとしても返還から逃れることは許されません。

また、補助金で購入した機械の耐用年数が20年の場合、20年超使い続けない限り返還しなければなりませんし、売却、目的外使用、無償譲渡、廃棄・取り壊しなども認められていないので、自由に財産を処分できず、事業を辞めることも許されません。

その結果、返還を逃れるため、壊れた機械類は多少窮屈でも工場内に放置するしかなく、経営実態がなくても廃業届は出さない経営者が増えているというのです。ある経営者は「時間が過ぎるのをひたすら待つしかない」と語り、息子や娘に借金を負わせることになるとの理由から、事業継承をあきらめる人もいます。

震災直後、被災地を訪問するたびに「今、被災地が抱える問題は未来の日本の姿だ。時計の針が一気に進んだだけ」と語る首長さんたちに何人も会いました。

「津波と原発事故で、それまで見えなかった社会構造の問題点が顕在化し加速した」

「震災と原発事故を機に、村の高齢化と過疎化の針が一気に何十年も進んでしまった」

と。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 能登地震の被災地でも進められる利用。東日本大震災から13年経って見えてきた「グループ補助金」の本末転倒
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け