ワイロを贈らなかったから不細工に描かれた?ある中国四大美女の悲喜こもごも

 

美女が競い合った中国ではパネマジ、すなわち、パネルマジックが行われていました。写真を加工して実物よりも可愛く、美人に見せる技術ですね。

特に大々的に行われたのが、古代中国、前漢の後宮においてです。もちろん、写真をよく見せる技術ではなく、実物よりも美人に肖像画を描くことです。前漢の皇帝元帝の頃、後宮には三千人を超える女性が仕えていました。

その中から元帝の目に留まり、寵愛を受けるのは至難です。元帝の方も後宮に足を運び、三千人の中から好みの女性を選ぶのは大変。そこで、元帝は絵師に後宮の女性の肖像画を描かせ、それを見て好みの女性を選んだのでした。

女性は元帝に選ばれようと絵師に賄賂を贈り、パネマジ肖像画を描いてもらったのです。

ところが、一切の賄賂を贈らなかった女性がいました。西施、しょうせん、楊貴妃と並んで中国四代美人に数えられる王昭君です。美貌ゆえ、パネマジの必要がなかったからなのか、そもそもパネマジや賄賂という行為を嫌ったのかはわかりません。

ともかく、賄賂を贈らなかった為、絵師の不興を買い、王昭君は逆パネマジというべきか実物と大違いの不美人に描かれたのです。このため、彼女は元帝の目に留まることなく、虚しい日々を送ります。

そんな紀元前三十三年のある日、元帝は遊牧民族匈奴の王から皇族の姫を妻に欲しいと要求されました。皇族からは嫁がせられないと、後宮から選ぶことにし、肖像画を物色、不美人の王昭君に白羽の矢を立てます。哀れ、王昭君は遥か異郷、蛮族の国へと人身御供同然に嫁がされました。

嫁ぐ日、初めて実物の王昭君を見て、絶世の美女ぶりに元帝は驚愕、嫁がせることを後悔しました。しかし、時既に遅し。王昭君は二千キロを超える過酷な旅へ向かったのです。逆パネマジをやった絵師を元帝は調べ、収賄が発覚、絵師を処刑しました。

それでも王昭君を諦め切れない元帝でした。それに対し、王昭君は匈奴の王に愛され三人の子供を産み、逞しく暮らしました。逆パネマジが生んだ悲喜劇です。

image by: Shutterstock.com

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