ぼろぼろの服を着た靴磨きの少年が、経済的・人間的成功をおさめるまで

 

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

にもかかわらず、ディックには長所もいくつかあった。卑怯なことや不名誉なことはしない。決して盗みはしないし、人を騙さないし、年下の少年に無理強いもしなかった。率直で、ごまかしがなく、男らしく、自立心がある少年だった。気高い性分の持ち主だったおかげで、ありとあらゆる卑劣な弱点はまぬかれていた

「これは、じいちゃんが子どもの頃かぶっててさ、死んだじいちゃんに敬意を表してずっと大切にしてきたんだ(略)」

「もちろん、きみが世の中で成功していくのを見たいんだ。読み書きができないと、その可能性はあまりないよね」

「人が言ったからって、本当にそうなるわけじゃないよ、ディック。ひとかどの人になろう、社会のまっとうな一員になろうと努めれば、いつかそうなるよ。お金持ちにはなれないかもしれない。誰もがなれるわけじゃないから。でも、いい職を得て、まわりから尊敬されるようにはなれるよ」

「きみは最初から正しいやり方をしているんだよ。どんな誘惑があっても決して他人の物を盗らない、ずるいことも恥ずべきこともしない、と決めたときから。そうすれば、きみと知り合う人はきみを信頼する。でも、うんと出世するには、どうにかしてなるべく教育を受けないと。そうしないと事務所や会計室で仕事の口は得られない。ただの雑用係としてもね」

「(略)印刷所にいた頃に手に入れて、お金よりも大事にしているものがある」

「なんですか?」

「読書と勉強が好きになったこと。ひまなときに勉強して自分を高めた。いま知っていることの大半はそのとき身につけた。あとで発明の糸口をくれたのも、その頃読んだ本なんだ。だから勉強する習慣は、ためになったし、お金にもなったんだ」

「労働に貴賎はないんだよ。まっとうな稼業を恥じる理由はない。でも、将来の見込みがもっとよくなる仕事につけるときが来たら、そちらを取るといい。それまでは慣れた方法で生計を立て、ぜいたくをつつしんで、できればお金を少し貯めるんだ」

自分ほど恵まれていない友を手助けしよう、自分が上へ登りながら、友が梯子段を上がってゆけるよう手を貸そう

いわゆる格言っぽいものがあるわけではありませんが、読者は、人生で大事な教えを行間から読み取ることができます。

貧しいながらも決して盗みはせず、卑怯なことも不名誉なこともしなかったディック。

親ならば、きっとこんな風に子どもを育てたいと思うのではないでしょうか。

「アメリカンドリームの原点、自己啓発の源流がここにある」という帯コピーに誘われて読みましたが、これは良い読書体験になりました。

ぜひ、読んでみてください。

image by: Shutterstock.com

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Amazon.co.j立ち上げに参画した元バイヤー、元読売新聞コラムニスト、元B11「ベストセラーBookV」レギュラーコメンテーター、元ラジオNIKKEIレギュラー。現在は、ビジネス書評家、著者、講演家、コンサルタントとして活動中の土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介。毎日発行、開始から既に4000号を超える殿堂入りメルマガです。テーマ:「出版/自分ブランド/独立・起業」

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【著者】 土井英司 【発行周期】 日刊

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