加害児童の「殺し方ノート」さえ“いじめ”と認めず。東京・町田市タブレットいじめ自死事件の“再”調査委員会が闇に葬りたかったもの

 

教育長を謝罪に追い込んだ門真中3いじめ自死事件の第三者委

一方、大阪門真市では、2024年3月、令和4年に起きたいじめ事件についての第三者委員会が報告書を出したが、実に62件ものいじめを認定し、いじめと生徒の自殺に密接な関連があるとした。

そもそも、大阪府門真市の久木元教育長は、その議会で「当時の対応に問題はなかった」と発言している。これは、YouTubeやニュース記録でも確認ができる。

しかし、第三者委員会の答申を受けて、3月19日の記者会見では謝罪をしている。

いじめ防止対策推進法の建付けで考えれば、第三者委員会としての依頼方法などの手続きは同一であろう。一方で、調査自体の精度やそれに伴う結果の在り方は全く異なる。

門真市の第三者委員会の報告書は公開版が市のHPで確認ができるので、ご興味のある方は読んでみるとよいが、いじめ防止対策推進法のいじめの定義で当然に判断し、SNS上での中傷などを含め「いじめである」と断じ、さらに学校がいじめとせず、組織的な対応をしなかったと対応の問題にも言及している。

一方、町田市においては再調査委員会ですらいじめの過程において加害者らによって作られていた「(被害児童へ向けての)殺し方ノート」をいじめ行為として認めていない。その理由は不明だ。ただ、思うに、学校は後生大事に金庫で保管していたということから、これ自体を闇に葬りたかったのかと勘繰りたくもある。

こうした自治体ごとの差から見えてくるのは、第三者委員会の設置権がある教育委員会や学校法人自体の問題であろう。

最後の砦となり得る「第三者委員会」はより厳密に行わなければならない。

また、いじめ防止対策推進法ができるまでの国会でのやり取りから考察すると、「第三者委員の中立公平性は誰からみてか?」については「被害者側」となっており、設置者だと言う文言はないから、こうした国会の立法段階のやり取りを重視するのであれば、被害側の意見は最重要であり、委員人選のみならず、委員会の独立性を担保する「設置要綱」にも意見を求めるべきということになる。

問題だらけで、有効な再発防止策を提言してもらっても、それが活かされず、なんとなく研修が増えるだけと思っている現場教員もいることだろう。

まあ、隠ぺいした人が出世するのを垣間見た職員がどこまで真剣にいじめ予防研修などを受ける姿勢が作れるかは疑問であるが。

高校に進学してしまえば「逃げ切り」完了

門真市のいじめ問題では、当時の加害者はすでに高校に上がり門真市の管轄にない。公立校は、大まかに小中学校は市区町村の管轄、高校は都道府県管轄だ。

教育委員会は独立した行政機関とされ、本来はその上下関係はないとされる。

一方、私学は学校法人などがその設置者となってだいたいは都道府県の許可を得ている。

つまり、門真市の場合は、加害者が公立校に進学したとすると、大阪府なりに事態の報告をして、いじめの指導をお願いするというのがその権能のギリギリ範囲であり、あとは大阪府がどう考えるか次第といったところだろう。

私立高校の場合もその高校の考え次第といったところか。

ニュースを見る限り、加害者の中には全く反省していない者もいると報じられている。そもそも第三者委員会の調査は、設置から結果が出るまでにだいたい2年程度、早くて1年前後だから、当然に管轄跨ぎが生じることがある。

この場合にどうするか?と言えば、何もないというのが多くの結果から見える実態だ。

システム上の問題や関連法の問題を問う意見が多いようだが、それはあると思いつつも、要は、次の管轄となる側の「いじめ加害」についての考え方、姿勢の問題も大きいだろうと思うのだ。

いじめ加害について例えば都道府県側が大問題であると捉えていれば、第三者委員会の答申を受けた段階で、アクションを始めるであろう。

いまのところ、そういう対応は見たことがないので、結果的に被害側には民事訴訟をしたらどうかとアドバイスすることになる。

最終的に司法が受け皿とする以外に今のところその環境は整備されていないのである。

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