なぜ市場は政府の思惑どおりに動かなかったのか?
ただ、興味深い点があるとしたら、「なぜ市場は政府の思惑どおりに動かなかったのか」という点だ。これについては多くのアナリストが分析しているのだが、まとめると以下のようになる。
「日銀が操作する政策金利は今マイナス0.1%だが、これがゼロになったところで利上げ幅が小さすぎて、ぜんぜん引き締めになってない」
しかも日銀はゼロ金利解除を発表前から小出しにしていて、「そろそろゼロ金利を解除する」というのが発表前から周知されているような状況でもあった。そのため、発表時にはまったく何のサプライズもなかった。
そういうのもあって、市場は足元を見透かしており「日銀の動きはたいしたことではない」と判断し、逆にそれを折り込んで円安に向かった。
ある意味、日銀や日本政府の動きは市場に「舐められていた」という見方もできる。日銀が市場に舐められているのであれば、「あらゆる手段を排除しない」というのも口先だけと見なされて、円安はけっこう長めに続くという見方をしているアナリストもいる。
日本は金利を引き上げていけるような状況になっていない
では、日銀や日本政府が「あらゆる手段」を使って円高にしたら、それは定着するのだろうか。為替の動きは日本政府や日銀の都合で決まるものではないので、「一概にそうとはいえない」と考える人もいる。
日本の金利が「ゼロ」でアメリカの金利が「5.25%」だったら、誰でもアメリカに資金を持っていく。グローバル資金は、金利の低い通貨から金利の高い通貨に流れるのは「常識」だからだ。
アメリカの景気はまだ底堅く、金利の引き下げはまだ不透明である。それは、高金利が意外に長く続く可能性があるということを示唆している。
そうであれば、円を売ってドルに替える動きはとまらない。一時的に日本側が何か為替操作しても、この金利差の構造が変わらないのであれば、結局はドル高円安になるという話でもある。つまり、こういうことだ。
一時的に円高になっても、最後は円安に向かう。
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