NHKも判で押したような解説。日本人が理解できない中国を取り巻く現状

Mazu/Matsu,Fujian/Fukien,Taiwan
 

現状、最もホットな火種はフィリピンの沖約120マイルの小さな浅瀬、仁愛礁(アユンギン礁)で座礁したままになっている船、シエラ・マドレ号をめぐる中比の攻防だ。シエラ・マドレ号は第二次世界大戦時の船で、フィリピンが南シナ海で中国の支配に楔を打ち込むため意図的に座礁させた船だ。

中国はこれを不満とし、フィリピン側に引き上げと撤去を求めてきた。一方のフィリピンはシエラ・マドレ号に補給を続けることで実績を積み上げ、隙あらば修繕のための資材を運び込もう試みた。

昨夏まで落ち着いていたこの問題が再燃した理由は一つではない。現在のフェルディナンド・マルコス大統領とロドリコ・ドゥテルテ前大統領との確執も指摘されているが、やはり中国はアメリカの思惑にフィリピンが乗せられている点に注目している。

4月11日には、岸田総理とジョー・バイデン大統領、そしてマルコス大統領がワシントンに集い、首脳会談が行われる予定だが、これなどは典型的な動きと映る。3月19日、フィリピンを訪れたアントニー・ブリンケン米国務長官は「米国の同盟関係強化は中国を標的にしたものではない」と語ったが、本音は明らかだろう。

南シナ海では仁愛礁だけでなく黄岩島(スカボロー礁)でも中国と対峙するフィリピンだが、純粋に自国の利害のため仁愛礁での動きを活発化させたかといえば極めて怪しい。

例えばマルコスは今年1月、台湾総統選挙後にわざわざ頼清徳副総統にSNSで祝意を伝えている。フィリピンのトップが台湾総統という表現を用いるのも寡聞なら、祝意を伝えるのも異例だ。いずれも中国をいたずらに刺激するだけで、フィリピンの国益に資するどころか害しかない行動だ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年3月31日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

image by:NGCHIYUI/Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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