ネット販売による実店舗の不要論
楽天市場やアマゾンがでてきたのは、21世紀になってからです。
実在の店舗に行かなくても、家に居ながらにして買い物ができるということになります。
もちろん、その為には運ぶ、つまり宅配費がすべて上乗せされるということになりますが、逆に、店がそろえた商品の中ではなく、広く様々なものから商品の種類と値段の比較を行いながら買い物をすることができるということになります。
このような流れに対して、スーパーマーケット業界は、「どうやったら店に来させることができるか」ということが最大のテーマになります。
私がいたマイカルという会社などは「時間消費型」「街をテーマにする」というようなコンセプトを持っていました。
その街のテーマということから、ゲームセンターから映画館、果てはホテルや観覧車まで、街にある機能の多くを持っていたのです。
しかし、結局は二つの課題をどのように両立させるかということが問題になります。
一つ目は「家から出て来るだけの価値をどのように創出するか」という事です。
基本的に買い物ということになれば、ネットで見ることができますし、ネットならば、口コミ情報なども得ることができます。
しかし、逆に「試着をする」「触ってみる」「買った時についでに何か他の商品を買う」というようなことはできません。
基本的には「遊ぶ」「体験する」「触る」ということはできないということになるのです。
ネットというのは、人間の五感の中で「視覚」「聴覚」は充足することができますが、他の三つの感覚、つまり「触覚」「嗅覚」「味覚」に関しては全く体験できることがありません。
そのように考えた場合に、この三つの感覚をうまく前面に出すことによって、顧客を誘引することができるということになります。
しかし、これらで誘引できるのは、「新規の顧客」だけであり「リピーター」はどんなものかわかっているのですから、リピーターの需要はうまくゆかないということになるのです。
ようするに「商品購入客のリピーターを店から買わせるようにする」ということをどのようにするのかということが最も大きな課題になってくるということになるのです。
二つ目は「その価値でどのように売り上げをつけるか」ということです。
「試食」などは、簡単に思いつきます。
しかし、試食というのは「無料」です。
こちらとしては試食させる人が付き、調理し、そのうえで無料で食べさせるので経費が掛かります。
そのように考えると「試食ばかり」で誘引しても、売り上げが伸びないということになります。
そのように考えた場合に、どうやって売り上げを上げてゆくのかということが大きな課題になるのです。
もちろん、マイカルはその戦略に失敗したということになりますから、倒産したのです。
店は、店を保有しているだけで開発費の減価償却や人件費、電気代などのインフラ費があり、そして店の在庫を抱えなければなりません。
その意味で経費が掛からないネットの方がはるかに優れているということになるのです。
西友やイトーヨーカドー
西友やイトーヨーカドーは、それぞれの問題がありまたそれぞれの弱みがあったと思います。
その中で、苦渋の決断をしたのでしょう。
しかし、「店に行って、商品に囲まれて買い物をする」ということ、または「服を試着する」というような事は、やはりネットではできないのです。
それらをどのように実現し、店の魅力を打ち出してゆくか。
そのことを考えないとならないのではないでしょうか。
(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2024年4月8日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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