国民の“真の声”が日本を救う。やりたい放題の自民政権に鉄槌を下せる「ミニ・パブリックス」とは

 

国の政策を動かした「市民発」の提言が大きなニュースに

2023年夏に日本列島を襲った連日の異常な猛暑がようやくやわらぎ、関東地方にも例年より2週間遅れで金木犀の香りが街に漂い始めた。そんな秋の気配がようやく感じられるようになった同年10月15日、神奈川県厚木市のあつぎ市民交流プラザで5回目となる気候市民会議が開催された。

気候市民会議は2019~20年にイギリスやフランスなどで開催されたことをきっかけに、今では世界各国に急速に広がっている新しい取り組みだ。

会議では、無作為抽出で選ばれた一般市民が、専門家の助言をもとに地球温暖化対策について複数回の会議を実施し、最後に国や地方自治体に具体的な政策提言をする。フランスでは23年5月、気候市民会議の提言をもとに、鉄道を使えば2時間以内で移動できるエリアの航空機の路線は、原則廃止する法律が施行された。提言の段階では職業政治家が関与していないにもかかわらず、市民発の提言が国の政策を動かしたことが大きなニュースになった。

厚木市で実施されている「あつぎ気候市民会議」も、世界各国の先行事例を参考に市民有志が実行委員会を結成し、6月に始まった。

この日は、脱炭素市民アクションプランの素案について、参加者が6つのグループに分かれて議論した。議題の一つとして、厚木市で生産された野菜を地元で消費してもらうためにはどうすればいいかについて活発な議論が行われていた。

「スーパーに厚木市産の野菜しか置かないようしてもらうというのは、現実的ではないですよね」

「移動販売をもっと増やすような仕組みを作ったらどうでしょう?」

二酸化炭素の排出量を削減するためには、遠くの土地で生産された農産物を輸送して消費するより、地産地消した方がいい。それは誰もが理解している。では、厚木市の市民が、市民自ら率先して日常の行動に移してもらうためにはどうすればいいか。「ああでもない」「こうでもない」といった意見を交わしながら、徐々に提言を作り上げていく。気候市民会議ではこういった「熟議」を重視している。

同会議の鷺谷雅敏実行委員長は言う。

「今の厚木市の制度でも、新しい条例が決まるまでに市民との意見交換会があり、パブリックコメントも実施されます。ただ、基本的な条文案はほとんど役所サイドで固まっていて、現実には市民が関与できることはあまりありません。その課題を解決する一つの手段として、気候市民会議があります。条例ができる前に、市民が市政に参加する機会を担保する。そのための仕組みにしたいと考えています」

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