国民の“真の声”が日本を救う。やりたい放題の自民政権に鉄槌を下せる「ミニ・パブリックス」とは

 

会議を「市民の縮図」にするために打たれた手

気候市民会議が世界で注目されるようになったのは、世界各国で起きている議会制民主主義の機能不全がきっかけだった。

議員は、特定の業界団体からの意見を議会で反映することを約束して票を集めるので、議会は業界団体の代弁者ばかりになってしまう。結果として職業政治家は票になる政策を優先し、地球温暖化問題のような地球規模の課題への優先度が低くなりがちだ。それは、選挙権のない未来世代を担う子どもたちのことを軽視していることでもある。議会制民主主義が構造的に持っている欠陥だ。

では、その課題を解決するために誕生した気候市民会議は、どのような手順で進められているのか。

あつぎ気候市民会議では、厚木市の協力を得て、住民基本台帳から無作為で選ばれた16~74歳の約3,000人に郵送で参加を呼びかけた。そのなかで「参加してもいい」と返信をした人から事務局が委員の属性に配慮して調整し、52人を選定した。選定は、年齢、性別、住んでいる地域などを考慮し、会議体が厚木市民の縮図になるようにした。この一連の手順は、国内外の気候市民会議で共通だ。そこから、気候変動問題の基礎知識や市民参加型の民主主義の意義などについて学び、グループに分かれて話し合いを重ねる。

会議に参加した市民は、毎回の「学び」によって新たな発見が得られるのも魅力だ。委員の一人である高校2年生の大貫桜和(さわ)さんは、こう話す。

「私は親に頼って生活をしている身ですが、家庭を持っている人は私とは違う視点があるので、とても勉強になります。ふだんは年代が異なる人と話すことがあまりないので、そういった人と混じり合って話すのが楽しい」

あつぎ気候市民会議では、会議に参加した人に1回3,000円の謝礼を払っている。会議の運営に協力したスタッフにも謝礼を出しているという。持続可能な仕組みにするためには、最低限の対価が必要だと考えているためだ。あつぎ気候市民会議は全6回の開催予定で、予算は約650万円。市が出した補助金のほかに、民間の支援団体からの資金の提供もあって実現できた。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 国民の“真の声”が日本を救う。やりたい放題の自民政権に鉄槌を下せる「ミニ・パブリックス」とは
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け