花粉症の原因は「抗生物質の濫用」か?東大名誉教授が突き止めた国民病の“真犯人”

 

「花粉症」のネーミングが間違いの元

《直感的違和感》

私も、「花粉症」という症状が知られるようになった当初からその言葉自体に違和感を抱いていた。最初は「そりゃ違うだろう」という《直感的違和感》。理由は簡単。杉と言えば日本の風土に最も適合した林業の根幹であり、日本の木造建築を支えてきた優秀な基礎材である。秋田杉をはじめ天龍杉、吉野杉などの1,000年ブランドの産地だけでなく、全国各地にいくらでも生育していて、その花粉が人に害を及ぼすなどという話はかつて聞いたことがなかった。別の近代的な要因で人の免疫機能が衰弱したために杉花粉ごときに情けない反応を示すようになった、原因と結果の取り違えによる杉への冤罪だと直感したからである。

《環境複合汚染への想像力》

次に、英国の科学ジャーナリスト=アランナ・コリン『あなたの体は9割が細菌/微生物の生態系が崩れはじめた』(河出書房新社、2016年刊、後に河出文庫化)などを読み「広く大気汚染やケミカル物質危害が折り重なった《環境複合汚染による免疫機能不全》という見方に同感した。コリンは、色々な汚染の複合の根底に横たわるのは「抗生物質の使用」であり、それこそが様々な「アレルギーの原因」と断言している。

とすると、大都市の大気汚染やハウスダストや食品に含まれるケミカルなど問題を構成する色々な要素が単に横並びになっているのではなく、どのような《立体的な論理的=歴史的実体構造》を成しているかに分析の関心が向く。

植物生理学者の小塩海平『花粉症と人類』(岩波新書、21年刊)も読んだが、花粉症は「単なる健康問題ではなく、現代人のわがままな振る舞いによって環境生態系との間にねじれが生じ、そのきしみやゆがみが私たちの身体反応に変化をもたらした結果」と述べている。彼は、同署のタイトル通り「花粉=主犯」説に立つのだけれども、「花粉症は免疫アレルギー疾患として位置付けられるようになり、花粉だけでなく、埃やペット、卵や魚貝類、金属やシリコンなどに対して過敏な反応を示す人が増え、問題は人間の側にあるのではないかという疑問が湧いてくるようになった」と視野を広げようとしている(のにそこに踏み込まなかったのは惜しいと、閑中忙話の21年4月24日付で書いたこともあった)。

《抗生物質濫用こそ原因という本質論》

こうして私は次第に《抗生物質=根本原因説》に引き寄せられていき、ようやく小柳津の具体的な解決提案とその実践活動に出会って感動することになるのである。

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