花粉症の原因は「抗生物質の濫用」か?東大名誉教授が突き止めた国民病の“真犯人”

 

あまりに深刻な濫用の影響

同じ抗生物質を繰り返し多量に摂取すると、体内に「耐性菌」が増え、それが感染を起こした場合に通常の抗生物質では治りにくくなる。実際に最新・最強の抗生物質を飲まされ続けている子どもには耐性菌が非常に多く検出され、そうすると今度は、その耐性菌に効く抗生物質を開発しなけれならず、イタチごっこになって抗生物質の種類が増えていく。同じような光景は、コロナ禍を通じてワクチンのレベルで我々は目撃した。あのようなことが200種類以上も用いられている抗生物質のそれぞれで進行する。その結果、複数の薬剤に耐性を持つ多剤耐性菌や、ありとあらゆる薬剤に耐性を持つ悪魔的な万能耐性菌まで出現してしまった。

さらに、小柳津博士が重視するのは「自己免疫疾患」である。博士自身が「よく分からない(部分もある)が」と断りながら書いているものを、私ごときが上手く要約・紹介するのは難しいので、同書を読んで頂きたいのだが、敢えて一知半解で言えば……、

▼すべての病気は炎症を起こすが、その炎症を起こすアレルギーには4つの類型がある。

▼I型アレルギーは、即時型で、例えば花粉などの物質が粘膜の細胞に付くとすぐにヒスタミンを放出し、それがくしゃみ、鼻水、目の痒みを生じさせる。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーショック反応など、比較的軽症ではあるが圧倒的に患者が多いポピュラーなものがこれに属する。

▼II型とIII型のアレルギーは、外から侵入した物質や自分の細胞の成分である「抗原」に対する「抗体」が出来て、それが暴走して「抗原」を攻撃したり包囲沈着したりして、自分で自分の臓器を痛めつけようとする重篤な「自己免疫疾患」を引き起こす。

▼II型には、橋本病(慢性甲状腺症)、重症筋無力症、血小板減少性紫斑症などの難病がある。

▼III型は、多くの「自己免疫疾患」が属するもので、(1)関節リュウマチ、(2)全身性エリテマトーデス、(3)シェーグレン症候群などの集合体である「膠原病」のほか、糸球体腎炎、全身性硬化症、間質性肺炎など。膠原病は原因不明だが、何らかの免疫失調により免疫細胞が全身至る所の膠原(コラーゲン)――(1)では関節を、(2)では関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などを、(3)では唾液腺と涙腺を、それぞれ攻撃して炎症を引き起こす〔IV型は省略〕。

▼これら以外に、原因不明ではあるが腸の免疫失調が関係していると思われる「その他」として、クローン病、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病、アルツハイマー病などがある……。

ひっくり返して言うと、昔は聞いたこともなくて戦後俄かに出現した数々の現代病≒難病の多くは、実は抗生物質の濫用が原因で腸内の免疫システムが破壊されてしまったために起きているのではないか?ということである。

「酪酸菌」にオリゴ糖の餌を与える

そこで小柳津が着目するのは「酪酸菌」である。炭水化物のうちの多糖類であるセルロースなど食物繊維は大腸で発酵・分解され、短鎖脂肪酸などとして吸収される。短鎖脂肪酸は(1)酢酸6、(2)酪酸2、(3)プロヒロン酸2の割合で吸収され、このうち酪酸菌が(「よく分からない」のだが)免疫ステムの司令塔であるTリンパ球=Tレグ細胞を増やし、それがあらゆる病気の元である炎症を抑制する。

酪酸菌を増やすのに最適な餌が「フラクトオリゴ糖」であることは博士の実験で経験的に分かっていて、それを多く含むのは「根菜類、野草、木の実、小動物、魚介類」など、農業が始まる以前の、端的に言えば“縄文食”である。それを博士は「ゴボウを1日1本食べなさい」と分かりやすく説くのである。それだけで「花粉症は早ければ5~6時間で治る」?私は花粉症ではないが、全ての免疫機能を強化したいので早速試してみようと思っている。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年4月15日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

高野孟さんの最近の記事

 

初月無料購読ですぐ読める! 4月配信済みバックナンバー

※2024年4月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、4月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.647]「花粉症」は花粉が原因ではない?(4/15)
  • 【再配信】[高野孟のTHE JOURNAL:Vol.646]民主主義の古くて新しい形──議会の機能不全を救う「ミニ・パブリックス」の挑戦(4/8)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.645]アベノミクス「規制緩和」路線の落とし子としての「機能性表示食品」(4/1)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2024年3月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.644]裏口からコソコソと出て闇に紛れて消えていくアベノミクス(3/25)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.643]米大統領選/ロバート・ケネディJrという第3の選択は?(3/18)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.642]何を言っているのか分からない自衛隊OBの台湾有事論(3/11)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.641]イラク戦争は米国が嵌った「罠」だったのか/米記者が描くサダム・フセイン側からの開戦の内幕(3/4)

2024年3月のバックナンバーを購入する

2024年2月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.640]ロシアのウクライナ侵攻から2年/泥沼の戦争に出口はあるのにどうして気がつかないのか?(2/26)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.639]「食料自給率」で迷走する農水省(2/19)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.638]米国の検察は自国の大統領に何ということを言うのか?(2/12)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.637]なぜこんなところに米軍が駐在していたのか(2/5)

2024年2月のバックナンバーを購入する

2024年1月配信分
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.636]ジャーナリストになりたい君へ《その1》(1/29)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.635]日本の「下からの民主主義」の原点としての中江兆民(1/22)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.634]イアン・ブレマーの「今年の10大リスク」を読む(1/15)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.633]今年は「選挙の年」、世界各国で次々に大統領選や総選挙(1/8)
  • [高野孟のTHE JOURNAL:Vol.632]明けましておめでとうございます!(1/1)

2024年1月のバックナンバーを購入する

image by: Shutterstock.com

高野孟この著者の記事一覧

早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 高野孟のTHE JOURNAL 』

【著者】 高野孟 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週月曜日

print
いま読まれてます

  • 花粉症の原因は「抗生物質の濫用」か?東大名誉教授が突き止めた国民病の“真犯人”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け