斎藤・玉木・石丸革命を叫ぶ「新しい有権者」が知るべき日本の敵とは?五大病を克服しない限りわが国に未来はない

 

本当の敵(5)地方と都市、一極集中 ~誰が若者を殺すのか?

最後に、日本を蝕んでいるのが一極集中です。例えば都知事選で石丸氏は、このことを問題視しました。それ自体は評価に足るものですが、問題は一極集中の犯人は誰かということです。

日本の改革は地方が握っているという議論があります。私もそうだと思います。これには2つの理由があります。

1つは、比較的小さな国でありながら、文化や生活習慣に多様性があることが、さらなる付加価値創造の原動力になるからです。また、地方それぞれにある文化の独自性は、国際社会でも通用するからです。東京という和洋折衷の、従って地方への優越感と海外への劣等感に歪められた、貧しい文化とは可能性の点で全く違います。

2つ目としては、地方にはまだまだ生活力があり、子どもを生む力があり、相互扶助のできるコミュニティがあるからです。東京のような疲弊もまだ地方を汚染していません。

ですが、そのようなメリットを完全に打ち消してしまうような問題も地方にはあります。それは、あまりにも遅れた価値観から脱することができていないということです。男尊女卑があり、年齢差別があり、生活コストが安い分、付加価値創造も低くていいという敗北主義があります。そのすべてが、若い世代の希望を奪っているのです。

東京は国内と国外の結節点に過ぎず、優越感と劣等感に歪んだ街です。インフラも劣悪で、人間を疲弊させる魔都と言ってもいいでしょう。ですが、地方の場合は、そうした東京のデメリットを帳消しにするような、地方の問題点、つまり個の尊厳が認められない封建制があるわけです。

これは本当に急を要すると思います。多少の傷みを伴ってでもいいので、改革のできた地方は残るでしょうが、ダメなら経済的にも社会的にも滅亡しかないと思うのです。このような地方社会の改革というのは、かつて政治的なテーマになったことはありませんでした。

なぜなら、男尊女卑と年齢差別があまりにも徹底していたために、改革という発想はゼロだったからです。この問題、特に地方に優秀な若い世代を人口移動させて、東京よりもはるかに幸福度と生産性を上げていく、そして滅んでいく魔都東京に代わって地方が高付加価値の知的産業で、日本を再生させていく、これは重要なテーマです。敵は非常にはっきりしています。

そして、そのような改革ができなければ、市町村単位だけでなく、道府県単位での社会の崩壊というのは予想よりも早く起きるように思います。

2025年以降に必要となる「建設的な現状否定」

2024年を通じて、日本を揺るがせた現状否定票の動きですが、現時点ではそこにはエネルギーはあっても方向性は明確ではありません。ですが、再三申し上げているように、米国のトランプ現象のような懐旧と孤立を通じて自壊に向かうような不健全性は、日本の現状否定の中には少ないように思います。

そうではなくて、このままでは衰退を加速して全てが不幸になり、全体が激しい痛みに包まれる、日本の現状否定票はそのような不安と絶望の中から出てきているのだと思います。これを一歩進めて、不連続な改革こそ最適解であり、少なくとも変えなくては、衰退の速度を緩和することすらできない、そのように考え、具体的な敵を見定めて行動に移す。2025年に求められているのはそのような動きだと思うのです。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2024年11月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「子どもの『体験格差』を心配することの絶望」もすぐ読めます

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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