相次ぐ白人警官の黒人射殺事件。肌の色だけではない人種差別の問題点

 

具体的には、2014年から全国的な運動として広がってきた “Black Lives Matter (BLM)” という運動への賛否がまず問われています。black lives というのは複数形で「黒人の生命」ということであり、最後の matter というのは動詞で「それは重要だ」という意味です。日本語に意訳すると「全ての黒人の生命は尊重されるべき」運動ということになります。「自分たちが殺されるのはおかしい」という非常に明確なメッセージを発するために発足した運動です。

このBLMですが、発端は2013年にフロリダ州で発生した白人の自警団員が、黒人少年を危険人物として射殺したという「ジマーマン事件」であり、その後は、ミズーリの事件、そしてニューヨーク、ボルチモアなどで、常に運動の先頭に立ってきています。基本的には非暴力で、思想的にはかなり慎重であり、特に言語表現などでは鋭くしかも洗練された「戦闘姿勢」を持っていると言って良いでしょう。

例えば選挙戦の序盤の話ですが、民主党のバーニー・サンダース候補が “All Lives Matter” つまり「(黒人だけでなく)全ての人間の生命は尊重されるべき」だという言い方をした際には、「人種差別の現状を理解していない」として激しく抗議を行い、発言の撤回に追い込んでいます。

ヒラリー・クリントン候補は、言葉遣いには慎重な人でサンダース候補のような「ヘマ」はしていませんが、そのヒラリー候補に対してBLMは「格差是正のバラマキでは、差別はなくならない」ということを追及しに行ったりもしています。一方で、共和党の候補たちからは、忌み嫌われています。

このBLMに対して、主として白人や警察組織からは「黒人対黒人の犯罪、つまり黒人が被害者の問題についても、警察は自分たちの危険を省みることなく治安維持に努めている」のだから、白人警官を敵視するのは止めて欲しいという抗議があるわけです。

ですが、こうした抗議に対してBLMは、「そうかもしれない。だが、現実は違う。黒人は自分が被害を受けている局面でも、警察が来たら、自分が加害者として誤解され、最悪の場合は自分が撃たれるという身の危険を感じてしまう。その結果として、緊急通報を躊躇する中で命を落とす人間もいる。こうした事態は即座に是正されなくてはならない」という反論をしてきています。

今回の問題は、最初の2つの事件を受けてBLMは反対運動を強化しているわけですが、これに対する悪質なカウンター暴力というべきダラスの警官虐殺が起きたことから、右派からはBLMへの批判が始まっています。例えばサラ・ペイリンなどは「BLMこそ人種分断の元凶。その自覚がない以上は狂言回しに過ぎない」という言い方で批判をしています。

問題のトランプは、一連の事件が起きる前は一貫して「正しいのは警官。自分は100%警官の側に立つ」と言ってきましたが、さすがに今の状況ではそんな無責任なことを言うわけにはいかないのか、本稿の時点ではダンマリを決め込んでいます。

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