こういう時に役に立つのは、官邸に入り込みやすい親安倍ジャーナリストの著作である。
田崎史郎氏の『安倍官邸の正体』は、「正体」というほどのものを掘り出しているわけではないものの、さすがに官邸内部の仕組みについては詳しい。「最高意思決定機関としての『正副官房長官会議』」について書かれたくだりに注目してみよう。
首相官邸でほぼ毎日、首相・安倍晋三を中心に開かれている重要会議の存在を知る人はごく限られている。…「隠し廊下」を通って、ある時間に首相執務室に集まってくるのは官房長官・菅義偉、副長官…の四人。これに執務室隣の秘書官室にいる首席秘書官・今井尚哉が加わって計六人…
第二次安倍政権になって始まった短時間の会議だが、少数のメンバーがカジュアルな雰囲気で話し合うだけに、ものごとがスピーディーに決まりやすい。田崎によれば「首相官邸で日本を方向づける最も重要な装置」なのだそうだ。
どうやら、重要案件は安倍首相をはじめとするこの6人が決め、その寡頭制に各府省の大臣や与党議員は唯々諾々と従っているようだ。結論ありきで、やみくもに国会を強行突破しようとする政治姿勢の元凶はここにあるのではないか。
そのメンバーの一人であり、とりわけ安倍首相のおぼえめでたき今井秘書官が、たとえば「谷から連絡させるからよろしく」とでも声をかけたなら、財務省理財局はそれなりに対応せざるを得なくなるだろう。
もし、安倍総理と一体となって思考する今井が、森友学園に関してなんらかの動きをしていたとすれば、ことは重大である。昭恵夫人というより、安倍総理自身の関与とされても仕方があるまい。
財務省も国交省も、面会記録などの資料を破棄したと言い張って、国民に真実を隠したままである。よほど不都合なことがあるのであろう。
この問題が発覚する端緒を開いた豊中市議、木村真氏は3月30日に参議院議員会館で開かれた集会において、「具体的な政治家の圧力がなかったかのように言われているが、私は安倍首相が関与していたと思っている」と語った。
安倍首相の意思を把握していなければ、今井秘書官が総理夫人付職員に、財務省とやりとりすることを認めるはずはないだろう。そう考えれば、おのずと、この問題の真の主役が浮かび上がってくる。