日本の民主主義は死んだのか。「共謀罪」強行採決を各紙はどう伝えたか

 

野党のせいで「中間報告」に?

【読売】は1面のトップ記事と左肩に関連記事。3面の解説記事「スキャナー」、その後は記者の解説も社説もなく、34面社会面にようやく国会の状況についての記事。他紙と違い、薄い対応しかしていない。見出しを並べておく。

1面

  • テロ準備罪 きょう採決
  • 委員会省略 与野党 徹夜の攻防
  • 内閣不信任案提出
  • 「加計」類似の文書存在

3面

  • テロ準備罪 与党「奇策」
  • 自民、公明に配慮
  • 野党「戦術ミス」の声も

34面

  • テロ準備罪
  • 緊迫審議 未明も
  • 与野党応酬 議場騒然

uttiiの眼

既に別のところに書いたように、《読売》は政治部長などによる特別な署名記事もなければ、編集委員などの名による記事もない。仕方がないので、中では1番分析的な発想で書かれている「スキャナー」を中心に見ていく。

「スキャナー」のタイトルは「テロ準備罪 与党『奇策』」というもの。「中間報告」を使って委員会審議を省略し、本会議で採決してしまうやり方について、さすがに《読売》も違和感を持ったのだろう。だが、「中間報告にはカギ括弧を付けず、奇策に付けているのはどのような含意からか。「中間報告」は国会法に定められたキチンとした制度だということで、括弧を付けずに使っているものと思われる。つまり、《読売》は、「中間報告を使って何が悪い?という開き直り」的な立場。他方、「奇策」については、まあ、珍しい方法ではあるし、野党は怒ってそんな言葉を投げ付けるだろうから、「彼らの言うところの奇策なるもの」という意味でカギ括弧付きとなったのだろう。《読売》自身は、「奇策でも何でもない」と言いたいのだと思う。他紙は括弧無しで「奇策」を、括弧付きで「中間報告」を用いている。

「中間報告」という禁じ手を選んだ理由について、「スキャナー」は、「公明党に配慮した」という、実にユニークな説明を紹介している。参院法務委の委員長は公明党議員なので、議長席を野党議員が取り囲んで怒号が飛び交うような映像を見られたくないという要望に応えたのだと言いたいようだ。ここに、そのような「勝手でルールを無視したことに対する批判の言葉は全く見られない

さらに、野党が抵抗を強め、委員長解任決議案まで出してきたのだから、審議を続けられる状況ではなくなったのだと、野党に責任を転嫁するかのような議論も紹介する。本末転倒を正論のように紹介する《読売》。

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