来春のビール値上げで「居酒屋」離れが加速、いよいよ危険水域に

 

ビールメーカーは収益の改善が期待されます。一方、居酒屋は難しい判断を迫られそうです。主力商品であるビール類の値上げは客離れに直結してしまうからです。

鳥貴族はビールメーカー大手4社が値上げを発表する前の10月1日から全店で全商品の値上げを実施しました。280円均一商品は298円均一とし、約6%値上げしています。値上げの理由の一つとして、6月からの改正酒税法を挙げています。

鳥貴族は約6%という高い上げ幅で値上げを実施しました。改正酒税法によりビールメーカーが値上げに動くと先を読んでのことかもしれません。ただ、値上げを実施した翌月の11月は既存店客数が前年同月比で7%も減少してしまいました。まだ1カ月分のデータしか公表されていないことと客単価が上昇していることもあり、値上げによる経営への影響はまだなんとも言えませんが、予断を許さない状況です。

値上げを見送る居酒屋もあるようです。11月22日付日本経済新聞によると「ワタミは21日時点では、運営する飲食店について『価格を据え置く方針だ』との考え」と報じており、ワタミは今のところ値上げをしないようです。

居酒屋業界は厳しい状況に置かれています。日本フードサービス協会の調査によると、市場規模は1992年の1兆4,600億円をピークに、その後は減少の一途をたどっています。ただ、東日本大震災直後の11年と12年は1兆円を割り込んだものの、その後は回復し、近年は1兆円をわずかに上回る水準で概ね横ばいで推移しています。

改正酒税法は居酒屋にとって追い風になる面もあります。近年、スーパーなどでお酒を安く買って自宅などで飲む「家飲み」に注目が集まり居酒屋業界の脅威となっていましたが、改正酒税法の影響でスーパーなどでの安売りが鳴りを潜めたため、家飲みをしていた人の一部が居酒屋に流れることが期待されているからです。

このように、改正酒税法の影響で居酒屋利用者が増える可能性もあります。一方、居酒屋が仕入れるビール類の価格が上がることで居酒屋経営が苦しくなる面もあります。

居酒屋は、値上げすれば客離れが起き、しなければ利益が圧迫されるという苦しい立場に立たされています。値上げするかどうかや値上げする場合の時期や値上げ幅などは、居酒屋各社の経営状況を総合的に判断して考える必要があります。

ビールメーカーによるビール類の値上げは居酒屋文化を衰退させる危険性をはらんでいるといえそうです。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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