【書評】このままでは、日本は子宮頸がんを予防できない国になる

 

著者は「医師として、守れる命や助かるはずの命をいたずらに奪う言説を見逃すことができない。書き手として、広く『真実』を伝えなければならない。これが本書を執筆することになったきっかけである」という。この本はいくつもの出版社で評価されながらも、出版ができなかった。実現まで2年を要した。

著者は2017年11月、英科学誌「ネイチャー」などが主催するジョン・マドックス賞を日本人で初めて受賞した。敵意や困難に遭いながらも、公益に資する科学的理解を広めることに貢献した個人に与えられる賞である。世界中の報道は(中国、韓国も)日本の子宮頸がんワクチン問題を「反ワクチン運動がメディアも政府も乗っ取った異常事態」と報じた。日本の大手メディアは黙殺に等しかった。

ジョン・マドックス賞審査委員会の講評

 

子宮頸がんワクチンをめぐるパブリックな議論の中に、一般人が理解不能な形でサイエンスを持ち込み、この問題が日本人女性の健康だけでなく、世界の公衆衛生にとって深刻な問題であることを明るみにしたことを評価する。その努力は、個人攻撃が行われ、言論を封じるために法的手段が用いられ、メディアが萎縮する中でも続けられた。これは困難に立ち向かって科学的エビデンス(証拠)を守るというジョン・マドックス賞の精神を体現するものである。

著者は、この問題にかかわる語彙は、女性のライフサイクル全般にかかわるものはもとより、「市民権と社会運動、権力と名誉と金、メディア・政治・アカデミアの機能不全、代替医療と宗教、科学と法廷といった社会全般を語る言葉であり、真実を幻へと誘う負の引力を帯びている」と書いている。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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