そこで同社は、2年後の2016年、なんと「1日の最低出社時間」までも廃止したのです!「最低週28時間は必ず働いてくれればいい。それと1日働いた時間を必ず記録する。それさえ守ってくれれば、あとは自由だ! 君たちの自由だ!」こうトップは社員たちに伝えました。
企業には労働者の健康を守る上で、労働時間を管理する義務があるので、それを果たすために労働者に協力してもらったのです。
こういった取り組みの結果、生産性も向上し、売上高は19億ユーロ、日本円で約2,520億。ひとりあたり1億8,000万円売り上げている計算になります。さらに、若者の人気企業になり、ドイツではパプスト社を真似る企業が増えているのです。
パプスト社のトップはこう断言します。「僕が社員に言い続けたのはキミたちを信じているってことだけだ」と。そして、「自由に慣れ、堕落した働き方をする社員も出てくるかもしれない。大切なのはそのことを常に意識し、働く人たちと向き合うことだ」と。
そうです。彼は「人間の力を信じた経営をしよう」と、覚悟したのです。これこそが、真の経営なんじゃないでしょうか。
方や、ドイツと同じく高齢化と人手不足に悩む日本はどうでしょうか? 人間の力を信じているのでしょうか? 社員たちひとりひとりに「期待」をしているのでしょうか?
人手不足で深刻なサービス業では、軒並み残業が増え、賃金も上がらず、若い人たちが次々と辞めています。
「もっと働け!」ではなく、「もっと休め!」
こう覚悟できるトップこそが、これからは勝つ。信頼の上に信頼は築かれ、期待の先に結果がある。人を信頼できない経営が働く人たちを苦しめている。そう思えてなりません。
さて、5月3日から連休後半戦。私も自分の「力」を信じて、いつもよりたくさん寝ようと思います。みなさんは? 連休の過ごし方、おしえてくださいね。
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※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年5月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年5月2日号)より一部抜粋