世界経済の日本化
GMが2009年に倒産したが、この原因は日本車のような小型車がなく、労働コストが高く、手持ち資金のショートが起きて破産法の申請をしたが、VWも同様なことになりそうだ。
GMもVWも省エネ、無公害などの技術的なイノベーションを避けて車を販売して、ブランドイメージだけで勝負するスタイルで、しかし、そのような販売は長続きしないことがあきらかになった。
日本車は、1つ1つ技術を積み上げて、着実に省エネや無公害へ前進させている。そのような努力がなく、販売台数だけを拡大した咎が出たようである。
日本のような着実な技術の前進がなく、デザインなどで売るほうが楽であるが、それはいつか通用しなくなる。
マツダの苦難の歴史を見ると、その苦難こそが、クリーンディーゼルを生み出した元であることがわかる。ロータリーエンジンを知っていますか。このエンジンを効率よく動かすために、エンジン内部の燃焼がどうなっているかを知ることが重要であり、いろいろと試行錯誤をしていた。
この試行錯誤から、透明な強化ガラスでできたエンジンを開発して燃焼を見える形にしたことが、マツダのエンジン構造の見直しにつながったのである。ロータリーという苦労が、スカイアクティブという効率的、省エネ、低公害なエンジンを開発できた元にあるのだ。
このような技術者の苦労なしには、新しいイノベーションは生まれない。
ソニーも財務畑の社長になり、ユニークな商品ができずに没落したが、技術を的確に評価できる人がトップに必要なのである。危機の時は、文系社長でも技術者に期待するので、良いものができることがある。この時、いかにそれまでに技術者に技術的な苦労をさせていたかが問われることになる。
技術が中心で世界は変革していくのが正しい。その技術をないがしろにして、販売やデザインを重要視していると、いつかは没落していく。ということを今回も思い知らされた。それもドイツという技術者を大切にする国でも、技術者が1,000万台の自動車販売という社長からのトップダウンの命令で、不正をする事態になったことを憂えるのである。
日本の技術者のように、着実な技術の積み重ねでしか、技術は進展しないのだ。その裏には石田梅岩の石門心学の影響を見て取れるのである。
世界が日本化するということは、世界が石門心学を学ぶことである。といっても、日本人自身が石門心学を知らないが、親の教育や周辺の人から信用が大切と言われているので、知らず内に勉強していることになる。
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『国際戦略コラム有料版』より一部抜粋
著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
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