汚染水、今も垂れ流し…福島第一原発の絶望的な実情

 

「凍土壁」は技術的に無理?

そもそも、入って来る水を止めないで、出る水だけ止めようとする海側遮水壁という当初の発想そのものが全く理解不能で、まずは1日当たり400トンも建屋に流入してくる地下水を止めるのが先決なはずで、ようやく東電もそれに気が付いたのか、建屋の四方を囲む遮水壁を造ることになりはしたものの、建設コストが安いという理由で採用された工法が、四囲約1,400メートルにわたって1メートル間隔で30~40メートルの深さまでパイプを差し込んで、その中に超低温の冷却材を循環させて周りの土を凍らせて壁にするという奇抜なものだった。普通はトンネル工事などで一時的に水を止めるために使われる工法で、恒久的な施設として技術的に相応しいかどうかには専門家の間も疑問の声がある。

それにしても、もしこの凍土壁が機能するのであれば、そもそも建屋の周りへの地下水流入は止まるわけだから、今まで滞留している分を吸い上げれば済む。そうだとすると、そもそも海側遮水壁の巨大工事は要らなかったのではないか。また、この凍土壁が機能しないのであれば、もっと上で、敷地全体に地下水が入って来ないよう敷地の外側にダムを作るしかなくて、それが誰が考えても最も合理的な対策であったはずだ。このことも含め、上記「アウト・オブ・コントロール」の中でとっくに問題点を指摘しておいたことである。

何をやっているのか分からない、東電のあまりにお粗末な対応ぶりである。

福島原発サイトの現状がどうなっているのか、最近はマスコミで詳しく報じられることが少ないので、以下に脱原発活動家の間で最近回し読みされている「現場報告」を紹介する。実際にサイト内で働いているベテラン作業員知り合い電話話した内容の要約で、テニヲハや誤字や重複などを最小限修正し、若干の注を施した。結論的に、状況は絶望的で、この状態を放置して別の原発の再稼働を急ぎ、五輪準備を進めるなど狂気の沙汰であることがよく分かる。

この実態はいずれ天下に晒されて、安倍が五輪誘致に当たって「アンダー・コントロール」と宣言したことの嘘がバレることになろう。

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 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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