「米中が南シナ海で一触即発」は本当なのか?高野孟が読み解く

 

1.人工島を根拠に領海を設定していいのか?

米国の主張は、海面に出てもいない岩礁を埋め立てて人工島を造成してそれを起点に周辺12カイリに領海を設定するなど、国際法上、許されないことなので、これを黙認すれば中国が勘違いして、今後もそのような行動を繰り返すことがないよう、明確な警告を与えることにある。

もちろん、公海上に人工島を作ってそれを自国領と主張し、周辺に領海を設定することなど、どの国にも許されるはずがない。

2.スービ礁は公海上か?

ところが中国は、これを公海上とは考えてはおらず、いわゆる「九段線」の中の自国の支配領域内と捉えていて、その範囲内で人工島と作ろうと何をしようと、それは勝手であると思っている。つまり、スービ礁に人工島を作って、それで初めて周辺を領海であると主張し始めた訳ではないという立場である。

それに対して米国が中国の言う「九段線」をキッパリと否定して南沙諸島全体に対する中国の領有主張を退け、南シナ海全体を公海であると規定しているかというと、そうではなくて、南シナ海の島々の領有権をめぐる争いには一貫して「中立」を保っていて、中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイの関係6カ国が「話し合いで解決すべき」という立場をとっている。ということは、米国は必ずしも、中国が人工島建設で公海を浸食して領海としたのがけしからんとは言っていないのである。

3.軍艦の領海通過は国際法違反か?

つまり、中国の人工島周辺が中国の領海であるか公海であるかは、中米双方において必ずしも明確ではない。しかし米国は、仮にこの海域が領有権問題が係争中の公海であれば、「公海の航行自由」の大原則が守らなければならないし、仮に中国がそれを領海とするのであれば、「領海の軍艦無害航行」の原則が守らなければならないとする立場から、敢えて軍艦を派遣して、中国がどういうつもりなのかをテストすることにしたのだろう。

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image by: Wikipedia

 

 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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