強引に中国を絡めてくる読売。ミャンマー総選挙を各紙はどう報じたか

 

私は大統領より上

【読売】は1面トップの基本的な記事に加えて、2面にも記事を載せている。見出しは「『スー・チー政権』現実味」「大統領資格は持たず」。選挙前の記者会見でスーチーさんは「私は大統領より上になる」と語っている。単独過半数を握ってNLDが政権を担当しても、党首である自分は大統領になれないように規定されてしまっている。非公式の場では「私が政策と党方針を決める」「政府はそれに従うことになる」とも発言しているらしい。《読売》は「政権運営が不透明になる可能性もある」とだけ指摘。

uttiiの眼

どう考えても、軍政から真の民政移管が果たされようとしている局面なのだが、《読売》の記事をここまで読んでくると「スーチーさんが独裁者になる可能性」を問いかけたくなるところだ。だが、仮に政権交代が実現しても、国防、内政など重要閣僚3人は軍が任命するし、議員の4分の1は軍人枠だ。むしろ、NLDの議員たちが跳ね上がって軍を挑発し、元の木阿弥になることを恐れての発言なのではないか。軍の式典にも顔を出すようになった自分なら、バランスを取りつつ、次第に軍の力を削いでいくこともできるという意味なのかとも思う。《読売》の書き方は中途半端で、間違った印象を与えかねない。
※ この背景については《毎日》《東京》が書いている。

それにしても、記事の最終段落には驚かされた。NLDが選挙公約に掲げる「積極的で自由な外交」に託(かこつ)けて、《読売》は「テインセイン大統領は、中国がミャンマー北部で建設中の水力発電ダム開発の中止を発表するなど、民政移管後は中国と距離をとるようになったが、この方針を続けるのか注目される」と、まるでそのことを期待しているように書く。

またしても中国が気になって仕方がない《読売》。

小さい問題だとは言わないが、ここで書かなくてもなあ…。ちょっと笑ってしまった。

もう1つ。ハッキリした狙いがあってのことか分からないものの、《読売》の今朝の2面には、1つ工夫がなされているように感じた。ミャンマーについての記事見出しは「『スー・チー政権』現実味」。思わず読みたくなる「引き」の強さを持った見出しだ。縦書きの各行を右から左に次々辿っていき、読み終えると、自然とすぐ下の記事の見出しに目が行くようになっている。そこに出ている見出しは「内閣支持上昇51%」。《読売》としては、1面トップにすることはできないが、どうしても読者の頭に叩き込んでおきたい見出しだろう。

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