リスクは?現状は?医学博士・しんコロさんに聞く猫の輸血の基礎知識

 

しんコロさんの回答

輸血による治療は外傷、手術、血管腫瘍の破裂、その他貧血性の疾患などの時に必要になることがあります。日本でもアメリカでも輸血療法は行われています。動物病院には献血犬や猫が飼育されている場合もありますが、頻繁に血液を採取することはできません。また、ペットには人間のように血液センターのような機関がありません。病院によっては、ドナー登録を募集している所もありますが、現状としては質問者さんのケースのように知人を通して血液のドナーを募集する場合も多いのです。採血量は10ml/kgを1回の採血の上限とし、再採血までには3~4週間開けるのが望ましいとされています。従って、4キロの猫から50cc採るのは上限を少し上回る量だと思います。

ドナー側のリスクは、血液を抜くことで血圧が低下し、元々心疾患があった場合にはその症状が現れるようになることがあります。レシピエント側のリスクとしては短期としてはアナフィラキシーショック血小板減少溶血などがあります。血液型が適合するようにクロスマッチテストというものを行いますが、それでも上記のような副作用が起きることがあるので、輸血中や輸血後には注意してレシピエントの状態を観察する必要があります。

また、長期のリスクとしては猫白血病ウイルス猫免疫不全ウイルスなどにドナーが感染していた場合、輸血による感染が起きる可能性があることです。そのため、ドナーの猫は完全室内飼いで、それらの感染症がないことが求められる場合があります。捕獲猫は必ずしも栄養状態は良くないかもしれませんし、感染症もあるかもしれません。恐らく選択肢がなかったからそうなったのでしょうけれども、ドナー猫に対するリスクも含めて捕獲猫をドナーとして使うのは倫理的にも微妙な部分がありますね。

倫理的には、輸血ができずに命を落としている猫が多くいることを考えると、理想は公的な血液バンクができることでしょう。現実には各病院や血液バンク団体による活動によって輸血が支えられており、まだまだ血液不足の状態が続いているという状況だと思います。

image by: Shutterstock

 

shinkoro

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」
著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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