怒りのプーチン、対テロ戦争主導でまさかの「正義の味方」に

 

欧米ロの和解は、「パリ同時テロ」前から決まっていた

というわけで、欧米ロの関係が劇的に改善されてきました。7か月前に書いたことが現実化してきた。こう書くと、「え!? 『パリ同時多発テロ』で関係が改善したんじゃないの?」と思われることでしょう。確かにそうなのですが、今回のテロは、「和解プロセスを速める役割を果たした」に過ぎないのです。

どういうことでしょうか?

対立してきた欧米とロシア。主体は、アメリカ、欧州、ロシア。このうちロシアは、「クリミア」をゲットしたので、満足している。しかし、欧米日から「経済制裁」されて苦しい。「制裁」を解除して欲しい。だから、ロシアは、もともと欧米との対立を望んでいないわけです。

欧州。実をいうと、欧州もロシアとの関係悪化をつづけたくない

なぜか?

欧州は、石油、ガスをロシアに依存している。そして、経済関係がとても深い。さらにロシアが、欧州からの「食料品輸入制限措置」(=報復制裁)をしていることで、農民が困っている。

結局、欧米ロの関係を悪化させていたのは、「アメリカの意志」だけだったのです。

ところが、アメリカの戦略が変わった。「AIIB事件」が起こったので、ロシアではなく中国が「主敵」になった。

アメリカはいつも、「主敵」と戦うために、「他の敵」と「組む」

たとえば、第2次大戦時、日本、ドイツと戦うために、宿敵ソ連と組みました。第2次大戦が終わると、今度はソ連と戦うために、かつての敵・日本、ドイツ(西ドイツ)と組んだ。1970年代になると、ソ連と戦うために、共産中国と組みます。

そして今、中国と戦うために、「ロシアと組む」。いままでフラフラしていたオバマさんですが、「AIIB事件」で決意が固まったのでしょう。アメリカの戦略転換については、国防総省顧問で、超ベテラン大物スパイ・ピルズベリーさんのこの本をご一読ください。

●「China2049」 マイケル・ピルズベリー著

米中関係の過去と現在と未来が、全部わかるようになります。

というわけで、欧米対ロシアの対立が、終わろうとしています。来年の今頃には、プーチンが来日できる状況になっているのではないでしょうか。

しかし、今は1930年代のように移り変わりが激しい時代ですから、断言はしないでおきましょう。

image by:  Bangkokhappiness / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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