Apple Watch用アプリをたった半日で作った男の開発秘話

 

一週間実際に使用する条件で書かれた各メディアのApple Watchレビュー

Apple Watch の24日の発売に向けて、各メディアによる「Apple Watch 体験記」が数多く書かれています。

re/code: A Week on the Wrist: The Apple Watch Review

The Verge: Apple Watch Review

Yahoo: The Apple Watch: Half Computer, Half Jewelry, Mostly Magical

Apple Watchのようなパーソナルなデバイスは、実際にしばらく身につけて使わないと良さが分からないので、Apple が「一週間実際に使ってからレビューを書く」という条件でメディアに Apple Watchを先行配布したのでしょう。

どのレビューにも共通するのが、「数あるスマートウォッチの中では最高の質感」「一度身につけたら二度と手放せないほどのデバイスではない」「電池は終日大丈夫」「一番のメリットはいちいちiPhoneをポケットから取り出さなくても良いこと」という評価です。

特に最後の一つはとても重要で、そこが私のゴルフアプリ(iBacknine)が目指すところでもあります(つまり、ラウンド中には iPhone をポケットから取り出す必要がない)。

半日で作ったもう一つのアプリ「Wireless Selfie」

ちなみに、勢いに乗じて、もう一つApple Watchアプリを Apple に申請しました(Wireless Selfie、こちらもこの原稿の執筆中に審査に通りました)。Swiftの勉強のために、以前にObjective-Cで書いたコードをSwiftに移植している時に、思いついたアプリがあったので、半日ほどでサクッと作って申請してみました。

Apple WatchをリモコンとしてiPhoneを操作するスタイルのアプリですが、iPhoneアプリがバックグランドにあっても使えなければならないというAppleのUser Interface Guidelineからは少し外れるので、審査に落ちる可能性も十分にあると思ったのですが、結構あっさりと審査に通りました。

こちらは、iPhone 側にはセフルタイマー付きの自分撮り(Selfie)専用のアプリが入っており、それを Apple Watch からリモコンで操作する、という使い方を設定しています。グループ写真などは、セルフタイマーを使っても結構撮影が難しいので、Apple Watch をリモコンにして簡単に撮影できるようにしようという発想です。

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あえてライセンス条件をつけたneu.Node

iPhone上でNode.jsアプリケーションを走らせるためのneu.Nodeは、今年の2月に全ソースコードをgithubで公開しましたが、その際、ライセンス条件として「個人、学校、NPO、年間売上 $1 million 以下の会社には無料」とだけ書いて置きました。

本当は、全員に無料でも良かったのですが、大きな会社の人がこれを見た時に、どう反応して来るか知りたかったからです。

すると最近になり、とある会社から連絡があり、neu.Nodeを使いたいので、企業向けのライセンス条件を教えて欲しいと言うのです。Facebook経由での連絡だったので、調べてみると、年間売上$35 millionの立派な上場企業です。

そこで、「どんなプロジェクトに使うのか詳しく教えてくれるならば、私の名前をiTunesストアの記述に載せるという条件で無料で提供しても良い。」と返事をしたところ、「調整させてくれ」という返事が返って来ました。

調べたところ、企業向けのロケーションサービスを提供している会社なので、開発しているアプリもiTunesストア用のものではなく、企業向けの専用アプリなのかも知れません。どんな顛末になるか楽しみです。

市場で成功するか分からない製品のアプリを開発するリスクについて

今週は、こんな質問をいただきました。

中島さんは、早速 Apple Watch 用のアプリを作られたようですが、まだ市場で成功するかどうか分からない製品に向けてアプリを開発するリスクに関しては、どうお考えなのでしょうか?その製品が市場に受け入れられなかった場合に、せっかくの開発コストが無駄になると思うのですが?それとも「Apple Watch は市場で成功するに違いない」という確信のようなものをお持ちなのでしょうか?

確かにもっともな質問ですが、今回のケースでは、「Apple Watchは市場で成功するだろうから、出遅れないために最初からアプリを作っておこう」という気持ちよりも、「AppleがApple Watchという面白いデバイスを世の中に出して来るのであれば、魅力的なアプリを作って Apple Watch の市場での成功に協力しよう」という思いの方が強いと思います。

iPhoneのリリース時にも同じような行動を取りましたが、その時はあまり意識はしていなかったものの、同じような気持ちだったと思います。

新しいハードウェアは、私のようなソフトウェア・エンジニアにとっては、「作られたばかりの遊び場」のようなものです。他の人たちがどう活用して良いか悩んでいるうちに、さっさと前例を作って、そこを「より楽しい遊び場」にしたいのです。

Apple が開発者向けに提供しているフォーラムを見ると、(iPhone アプリとは違って)限定的な Apple Watch アプリの開発環境に戸惑っている開発者が大半です。そんな中で、Apple Watch の設計思想を読み、与えられた開発環境の中で最高のアプリを作る。これに勝る楽しみはありません。

 

nakajima 『週刊 Life is beautiful』
著者:中島聡
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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