2015年、アメリカは「中国打倒」を決意した
さて、「アメリカ一極世界崩壊時」に登場したのがオバマ大統領でした。2009年1月~13年1月の1期目、彼が取り組んだのは、主に「100年に1度の大不況」を克服すること。いろいろひどいことをいわれるオバマさんですが、「世界経済を破滅させなかった」のは立派です。
実際、2008年の危機は、1929年の世界恐慌並にひどかった。しかし、アメリカは、約80年前の大恐慌から学んでいて、同じ過ちを繰り返しませんでした。
2013年1月からの2期目、オバマさんは、世界の問題にも積極的にかかわるようになってきました。しかし、外交については、多くの人が指摘しているように「イマイチ」といわざるを得ません。
13年8月、オバマは、「シリアを攻撃する!」と宣言します。しかし、翌9月、戦争をドタキャンし、世界を驚かせました。
14年3月、ロシアがウクライナのクリミアを併合すると、オバマは日本、欧州を巻き込んで「対ロシア制裁」を発動。
14年8月、オバマは、「イスラム国」(IS)への空爆開始を宣言しました。
2014年、アメリカ外交は、「ロシア-ウクライナ問題」「IS問題」が主なテーマだったのです。
しかし、2015年、大事件が起こり、アメリカの外交政策は大きく変化します。「大事件」とは、いつも書いている「AIIB事件」。イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国などの「親米国家群」が、アメリカの制止を無視し、中国主導「AIIB」への参加を決めた。
「え~~~!? 親米国家群は、アメリカではなく、中国のいうことを聞くか!?」
このことは、アメリカ支配層に大きな衝撃を与えます。
「アメリカは、中国に覇権を奪われようとしている!!!」
こう自覚したアメリカ支配層は、「中国打倒」を決意します。そして、2つの行動を開始しました。
1つは、中国バッシング。中国は、2013年から「南シナ海の埋め立て」を開始していた。アメリカは2015年、突如このことを問題視しはじめ、中国バッシングを開始。2015年5月には、日本のメディアも「米中軍事衝突」の可能性を指摘するようになりました。
2015年9月、アメリカ(特に政界)は、訪米した習近平を、あからさまに冷遇しました。2015年10月、アメリカは、南シナ海で「航行の自由」作戦を実施。再び、「米中軍事衝突の可能性」が指摘されました。
もう1つは、「他の問題」を収束させる。
中国問題の他にも、アメリカは、世界情勢がらみで2つの大きな問題を抱えています。すなわち、「ウクライナ問題」と「IS問題」。「AIIB事件」後、アメリカはこの2つの問題解決にむけて動きはじめました。
1つは、ロシアとの和解。「中国、ロシアと同時に戦うのは愚か」ということで、ロシアと和解する。これは、リアリズム外交の正道ですね(他の例、1970年代初め、アメリカはソ連に対抗するため、中国と和解した)。
昨年12月15日、ケリー国務長官は、モスクワを訪問。プーチンと4時間会談しましたが、「ウクライナ問題」には、ほとんど触れませんでした(メインは、シリア、IS問題)。そう、あわれウクライナは、アメリカに「梯子を外された」のです。
もう1つは、「IS問題」から距離を置くこと。アメリカは、「中国問題」に専念するため、「IS問題」とも距離を置こうとしています。
そもそも、「シェール革命」により、世界一の「産油」「産ガス」国に浮上したアメリカ。もはや(資源がたっぷりある)中東問題は、「アメリカの国益とはあまり関係ない」と思い始めている。だから、極端な話、「IS」は「重要問題ではない」と考えている。
もちろん、口ではそういいません。しかし、「行動」が語っています。アメリカは、「IS問題」をロシアに解決させ、自分はパワーを温存しようと考えている。
以上まとめると、2015年アメリカは、
- 中国打倒を決意した
- ウクライナ問題を忘れた
- IS問題を、他の国にやらせることにした
となります。オバマ政権も終わりに近づいていますが、ようやく「リアリズム外交」の方に向かってきました。