例えば身近な例でいうと、ねこの「療法食」というものが本当に効果があるかどうか、査読をされるようなしっかりした研究データとして発表されているものはほとんどありません。効果があるかどうかも分からないけれども、大手企業が「自社調査」といってしまうと、多くの獣医がそれを鵜呑みにしてしまうというのが実情なのです。そして、ペットオーナーは獣医が言うのならば、それを信じるしかありません。そこに何の疑いも生じないわけです。
しおちゃんの膀胱炎の時も、「療法食にした方が良い」と一人の獣医が言いましたが、それに対して僕が「その根拠は?」と質問してみました。すると「そういう研究がある」と言うので、「どの研究?」と聞くと、獣医は答えられませんでした。その獣医はそんな研究が実際にあるかどうかも知らず、ましてや論文を読んだことさえないのです。事実、そんな研究は実際に査読された論文としてはほとんど出ていなくて、その獣医は企業の受け売りで「そんな研究がある」と曖昧なことを言っていたのでしょう。
腎疾患の末期時など、療法食が効果を出す可能性のある特定の場面というのは実際にあるにはあるのですが、泌尿器系の問題が出たからといって即療法食というのは間違いです。なぜなら、そうすることで、また別の健康リスクを生じさせる可能性があるからです。現段階のしおちゃんの状態では、療法食にすべき理由がないのにもかかわらず、その獣医はそこまでは考えずに曖昧なアドバイスをしていたのです。すなわち、科学的なアプローチではなかったのです。
このように、一見「科学」と見えるものの中には「実はかなり曖昧」なものがたくさんあります。ですから、テレビでやっているからといってその情報を鵜呑みにせず、自分で調べたり、セコンドオピニオンを求めることは大切なことです。その一方で、「本当の科学」ももちろん存在するし、真面目に正直に研究をしている人たちも沢山います。
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著者:しんコロ
ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。
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