ホンモノ以上の実写感。孤高の天才画家、伊藤若冲の数奇な人生

 

相国寺との深いつながりと皇室との関係

江戸時代の画家・伊藤若冲は相国寺の僧・大典(だいてん)と親交があり、若冲作品が相国寺に伝わります。「若冲」の号も、大典が老子の文章から与えられたものだと言われています。

若冲が10年の歳月を費やし動植物を描いた「動植綵絵」30幅は綿密な描写、画絹や絵具にも注意を払った最高傑作です。鶏、魚介類、昆虫、草花が多種、濃密に色鮮やかに描かれています。「動植綵絵」「釈迦三尊図」3幅は、伊藤家と若冲自身の永代供養を願って相国寺に寄進されています。

以後、法要に際して「釈迦三尊図」「動植綵絵」は掛けられています。明治時代の神仏分離令後の廃仏毀釈により寺の寺領が没収され窮乏に陥ってしまいます。この時相国寺は「動植綵絵」と寄進状、売茶翁の一行書は明治天皇に献納されています。

なんとか寺の存続を守るためにと差出した貴重な寺宝の下賜金1万円により相国寺の境内は守られたといいます。その時の経緯から現在も若冲の絵の一部は皇居で大切に保管されています。

動植綵絵の魅力

約10年の歳月をかけて制作された、生命の「神気」を描いた30幅の花鳥画。濃密な空間、埋め尽くされた溢れる命、生命の息吹を感じる力強い作品です。画材の細部に注がれる熱い視線、高い描写力と鮮やかな極彩色で、鶏、昆虫、魚介類、草花が描かれています。忠実に描かれた写生でありながらデザイン性を持ち合わせているのも若冲の作品の特徴です。模写という型から飛び出し実物以上に写実感のある型破りな絵画手法は天才画家の余裕を感じさせるものがあります。どの絵も最高級の画材で描かれており、250年ぐらい経っているにも関わらず色あせていません。

若冲は全幅を相国寺に寄進しましたが、明治時代に明治天皇に献上されて以降皇居に所蔵され、現在も宮内庁が管理しています。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。
これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Wikimedia Commons

 

おもしろい京都案内
毎年5,000万人以上の観光客が訪れる京都の魅力を紹介。特にガイドブックには載っていない京都の意外な素顔、魅力を発信しています。京都検定合格を目指している方、京都ファン必見! 京都人も知らない京都の魅力を沢山お伝えしていきます。
<<登録はこちら>>

print
いま読まれてます

  • ホンモノ以上の実写感。孤高の天才画家、伊藤若冲の数奇な人生
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け