不可解な設問、的ハズレな指導要領。ヒドすぎる全国学力テストの実情

 

そもそも学習指導要領が間違っている!

全国学力テストについては兼ねてより、その結果公開の是非であるとか、入試への活用の是非であるとか、いわば「周辺の問題」ばかりが語られてきました。

つい最近は、馳浩文科相が、全国学力テストの都道府県別成績を向上させるべく「対策授業」をしている学校(教委)があることを批判するコメントを出すなどしたそうです(毎日新聞4/21)。

しかし、私からすれば、こういった話はどれもバカげています。

核心的な部分に、いっさい触れていないからです。

核心とはすなわち、「問題の質」です。

これらのテストによって、本当に「国語力」「算数力」ひいては「学力」を計測することができているのか?

この疑問を投げかける識者およびマスメディアには、なかなかお目にかかれません。

学習指導要領にのっとって文科省(>国立教育政策研究所)が責任を持って作っているのだから問題ないとでも考えているのでしょうか。つまり、お上が作った問題は完全だということなのでしょうか。

私はそもそも、学習指導要領※の国語科の中身そのものに疑問を持っています。

今回の分析も、結局はそこに行き着きます。

それがどういうことか、簡単に説明しておきます。

学習指導要領では、国語力を次のように分類しています。

「話すこと・聞くこと」
「書くこと」
「読むこと」
および「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」

私は、上記の3分類(話す・聞くを分けるなら4分類)は、全く間違っていると考えています。

国語力とは、次のように分けるべきです。

言いかえる力(同等関係※整理力)」※抽象・具体の関係
くらべる力(対比関係整理力)」
たどる力(因果関係整理力)」

私が主張する、「3つの力」です。

このことは、私が2009年から著書や雑誌等において何度も述べてきたことであり、今さら詳しくは書きません。

あらためて詳しく知りたい方は、こちらをごらんください。各種の図も掲載されています。

今「私が主張する」と書きましたが、こうした考え方は、たとえば大学受験の現代文指導に当たっているような先生方ならば、みな多かれ少なかれ主張していることです。

実に「今さら」なのです。

しかし、文科省は分かっていません。

だから、言い続けなければなりません。

何度でも書きますが、読む力も、書く力も、話す力も、存在しないのです。

私たちは、読む力を使って読むのではありません。
書く力を使って書くのではありません。
話す力を使って話すのではありません。

言いかえながら話し、くらべながら話し、たどりながら話す。
言いかえながら聞き、くらべながら聞き、たどりながら聞く。
言いかえながら書き、くらべながら書き、たどりながら書く。
言いかえながら読み、くらべながら読み、たどりながら読む。

これが正しいとらえ方です。「正しい」というのは、「形がある」「有形だ」ということです。

言いかえれば、「真似できる技術である」ということです。

野球力、バスケ力、サッカー力などというものはありません。まして、スポーツ力などと言えば、それは全くの「無形」です。

あるのは、投げる力、跳ぶ力、走る力といった原初的能力だけです。

投げながらバスケをし、跳びながらバスケをし、走りながらバスケをする。

これが正しいとらえ方です。

投げる、跳ぶ、走る。

そういった原初的能力でなければ、測定はできません。

しかし、学習指導要領にのっとって作られた全国学力テストは、原初的な言語技能を測る仕組みになっていません。

「この設問は、どんな力(技能)を問うているのか」
「この設問は、その技能を測ることができているのか」

みなさん、一問一問を、そういう目でチェックしてください。

そうすれば、おのずと、全国学力テストの本質的な問題点に気づけるはずです。

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